- C 702話 共同戦線 2 -
発令所から直接、ボクらの装甲車へ声を掛けてきている。
スピーカー放送にしないのは恐らくは、罵り合ってる乗務員たちへの配慮か何か。
それでも、セイル上部にある水夫には一言。
そう一言くらいはしかり吐けてほしい...
「姐さん、それはイケねえよ! こいつら当たり屋ですぜ!!!」
発令所からも、やや批判的。
セイル上部からは、罵倒が飛んでた。
いや、どっちかにして。
マジで。
――あいつら当たり屋ですぜ――これも、置換された翻訳された言葉であるんだけども...
本当に適当な単語が選択されてるんだなあと、つくづく思う。
当たり屋とはひどくない?
「当たり屋だろうが!! 乗船許可も待たずに他人さまの船にぶつけてくる輩に、どんな言葉が似合うというんだよ! この糞がっ!!!」罵り合いが再開されて、マイクを持つヴィヴィアンが咳払いする。
流石にこの流れに彼女の方に苛立ちがみえたようで。
スピーカーの向こう側で、何か鈍い音が聞こえた。
セイル上部にあった水夫も、偉丈夫みたいなゴリラに殴られたようで...
「やかましいわ!! 四の五の言ってねえで、手前らは次の見張り組と交代して、ブラシもってトイレ掃除だバカ野郎ども!!!」
たぶん、もう2、3発の鉄拳制裁が飛んだ模様。
なんて言うか、
悲鳴みたいなもんが聞こえたような気がする。
◇
「お見苦しいところを」
“湖の乙女”号と、我らのゴーレム装甲車はアンカーケーブルで、しっかりと固定されたとこ。
アンカーボルトで外郭装甲をぶち抜いて固定しようとしたら...
流石に怒られたので。
ハナ姉の交渉術による甲斐もあって、第3砲塔にしがみつくような形状となった。
もっとも、衝突のせいで潜水も出来ないし。
砲塔も動かない。
潜水艦としても致命的、軍艦としても。
「いあ、こちらも失礼しました」
交渉の席に気絶から覚醒した、ボクも加わった。
ヴィヴィアン女史の目が大きく見開かれたようなきがしたけど。
気のせいじゃなくて、
「確かに雰囲気だけならば、一恵さんに似ている」
は?!
まさか、こんな場所で...
「叔母様の名が出るとは??」
ボクの母なのに。
ボクよりも早く、ハナ姉が反応した。
いあ、確かに親戚の中で一番の年上で、かつ母さんとの付き合いが長い、ハナ姉の方が反応速度が高くても...仕方ないかもしれないけど。其処は先ず、家族に譲ってもらえないでしょうか?
「あ...」
ほら、ヴィヴィアンさんが困ってる。
ボクの反応を見て、彼女は次のカードを切りたかったに違いない。
すっかり牙が抜かれたような状況で。
「ハナさんが応えるとは」
「このちんちくりんなマルのどこが、一恵さんに似ていると? 流石に四六時中、それこそ風呂にも入れて、手足を洗い、髪をとかして『おっぱい大きくな~れ』ってまじないしながらマッサージをしているけど...やはり他人の目から見ると、何処が似ているもんかな?」
い、いや、やめて姉さん。
それはボクの恥をさらしてる訳で。
「どこがと言われると」
まじまじと見る...
でもなく、やや仰け反りつつ目が細くなっていくのがモニターごしにも分かる。
余計な情報のせいで、あちらの困惑はそのままボクに反射するわけで。
耳が赤いな?
ハナ姉が真面目に問うてきたけど、無視してやった。
もう、誰のせいだよ!!