- C 700話 悪役令嬢の進撃 30 -
「支援砲撃?!」
座標も送ったけど。
まあ、あっちも驚いてるだろうけども。
こっちもこっちでね、色々あったんだわ――あれは、1時間前かな。
◇
海岸線へ向かう道すがらのこと。
「たぶん、見つけた」
なんて曖昧な事を言う、エサちゃんがあってね。
素で、宙を“くんくん”する子があろうとは。
土煙なんかを吸こんで、咽てる姿も可愛いこと。
「何を見つけたの?」
ボクは彼女に問うてみたのだ。
エサ子の野生の勘というものに賭けたといってもいい。
そうして彼女は、
「聖櫃の匂いがする」
なんて言ってたんだが。
聖櫃の匂いってのは何?
およそ不用意に、ボクは砲座を見上げた。
目の前に火花が弾けたような。
ハナ姉は、ボクの膝の上でゴロゴロしてるし。
いや、がっちり腰をホールドして太ももに顔を埋めてて――ちょ、動き難いことこの上なし。
で。
これだ!
何がって聞き返すでしょ、エサちゃんに踏まれたんだわ、ボクが。
不用意に見上げたから。
エサちゃんは下着をつけていない!
いあ、下の方じゃなく......上、の方ね。
よれよれの首回り。
その径が左右どちらかに偏れば、容易に肩が見えるくらいのシャツを着て。
不用意に下から見上げると、アシンメトリな裾の隙間から、ヘソやら下乳やらが見えるワケ。
ブラをしていない。
ボクが知れば、次の行動は予測できる――口に出すんだわ『なんで着ないのか?!』と。
運転中のアロガンスの耳に入る。
まあ、流れはこんな感じだ。
「見えた!!」
――みえた?!
操縦席のふたりからも、
「なるほど、アレか!!」
目の前がちかちかするボクは、ハナ姉の責めも受け流せずに悶絶。
代わりにコロネさんが操縦席側へ。
「何が!?」
「エサ子の言った裏取りだ。聖櫃の奴らだよ!」
洋上を移動する黒光りの船体。
セイル上部で警戒監視中の水夫も、ボクらを視認したようだ。
船が潜航し始めたわけ。
◇
あのあと、どうしてこうなったかは...
ボクにもよくわからない。
ウナちゃんがアロガンスの耳元でか、或いはその傍で声高にか。
兎に角、
『アクセルを踏めー!!』
って叫んだのは聞こえた。
ゴーレムの質量攻撃はバカには出来ない。
数百年前。
ゴーレムパンチを受けた勇者が、何百メートルも吹き飛ばされたのは圧巻だったし。
ゴーレムキックでビキニ戦士が肉塊になったのもグロかった。
僧侶によって蘇生されたら、なんか嗤ってて――ドン引きしたものだけど。
まあ。
ゴーレムの質量攻撃は凄まじいってこと。
んで、この話のケツなんだけど。
刺さってる。
あーえー、っと。
彼らの船に刺さった。
こう、弓なりの弾道というか...軌道? そんな雰囲気で突っ込んで。
ぐさっと。
刺さった。
操縦席は無事だけど、
ふたりが伸びてる――「大丈夫、気絶してる」
砲座からエサ子が這い出てきて、ふたりの安否を確認した。
ボクは残念ながら、またも退場を余儀なくされ。
あ。
衝撃によって、角で頭打った。
ハナ姉はボクをクッションに致命傷から逃れたようで、元気そのもの。
聖櫃の連中と、口喧嘩の真っ最中。
誰か、ボクにヒールを...プリーズ!!