- C 698話 悪役令嬢の進撃 28 -
中欧艦隊が騒然としている原因、それの旋回範囲が広くなる。
しかも少しだけ高度が下がったようにも...
いや、実際に下がったんだわ。
コロネさんたちらの回収のために。
巨乳姫が直接、判断してくれた――えっと、キルダ・オリジナルさんの方は就寝中とのこと。
「じゃ、海岸線で合流かな」
ボクの提案を快諾してくれて。
送り込まれるのは新型の怪鳥ゴーレム。
初代の頃からずっと改良が施されて、今や第7世代機なんていわれてる。
何がすごいって、
ボクにも全くわからない。
彼女らが言うには...
とにかく6世代のと比較すると25%増しの性能アップだっていう。
やっぱりよく分からない。
えっと、どこかの賢人が言うには――錬金術の錬成と効率化はおよそ20か月ほどで、約2倍になる――と、説いた者があるという。
何を言ってるのかさっぱり。
ボクの頭の中はただ一つ、ボクの生み出す“ゴーレム可愛い”ってだけ。
賢人さまの考える事なんて分からないよ。
魔法の衰退とともに、科学としての錬金術が飛躍的な発展を遂げてきた。
怪鳥ゴーレムも...見よう見まねではあるけども、オリジナルの差を埋めてきていることは確かだ。
この発展は目覚ましい。
オーパーツだったボクの技術に世界が追い付いてきた。
ちょっとくすぐったいなあ。
魔界製のはさらに上を行く。
「じゃ、海岸でお別れですか?」
寂しがってくれるのはありがたい。
海岸線で出会って、海岸線でお別れとは、ね。
感傷に浸るには...少し早いか。
「そうなるかも」
そう。
その時までは、海岸線でお別れになると思ってた。
その時までは。
◆
コトが動いたのは。
サバ公爵領からの平電だ。
暗号なしの『SOS』。
南カリマンタン島に東洋艦隊が押し寄せてきたってもので。
欧州連合らは掌返しで、参戦を表明する。
とはいっても、カリマンタン島周辺で活動しているのは中欧艦隊のみだが。
上ばかり警戒してた彼らも不平不満を漏らす。
「そうは言ってもだが、航空支援は片道になる。君らのキャリアが我々の水上器を収容してくれるというのであれば、空に揚げなくもない...だが、その場合は――」
北カリマンタン島の北部沖合までウイッチ・キャリアを持っていく必要がある。
と同時に、その周辺海域は主戦場にもっとも近いという。
「我々の飛行ユニットでは、片道でもその洋上にたどり着くのが精いっぱいだ!!」
フロート付の飛行ユニットであれば、魔法少女・少年のオドに負担を掛けなくて済む。
代わりに数が無い。
しかも重量制限により、ハードポイントも実践向きではない。
要するに、長距離の連絡向きなのだ。
さて、経済半径の狭い飛行ユニットではせいぜい、500キロメートル。
補給なしの状態でここまで飛べる。
が、失神すれすれの飛行距離でもある。
安全を考慮すれば、クァンガイ航空隊基地より南下した民間飛行場が使いたい。
戦争なのだからは、ちょっと使いたくはない。
領主はニャンチーといい。
スカイトバーク王国の重鎮と言う、噂のみの地である。
「それでも、航空支援が欲しいと」
「いえ、結構です」
クァンガイ航空基地との通信を切る。
憤慨する提督と、現場指揮の艦長とのせめぎ合い――提督は『貴様のような命令不服従な者は信が置けぬ!! 即刻解任とする!!!!』なんて怒髪天の取り乱しようだったけど。飛行甲板の下にいる操艦ブリッジの艦長も、航空艦橋の飛行隊長と同じ意見。
戦場が近くなるリスクは負えない、だ。