- C 697話 悪役令嬢の進撃 27 -
「やあ、みなさん...初めまして。通信の痕跡を残してくれてありがとう」
無機質な挨拶状もあったもの。
静かに怒ってる感じで。
この場に巨乳姫が居なくて良かった――あの人が居るとウサギちゃんの精神が破壊される。
「どなた?」
ヴィヴィアンのは素直に。
率直に尋ねてみた。
相手がどう応えるかなんて気にしてないし、別にどうでもいい。
ただ、割り込まれたモニターの向こう側で、閉口している魔術師の表情が気になる。
そんなとこ。
彼は彼で、知った顔と認識――天領海軍の将校たちのリストがある。
幸いというか...
総長が天領に潜伏してた折に、彼が勝手にまとめたものだが。
「うーん、シーラビット族のウサギだ」
ウサギ顔のウサギがしゃべる世界線。
こちら側にも、海猿族はいるし、海猫族や海犬族もあるんだから、魔界生まれの魔界育ちのウサギが居てもなんら、不思議ではなく。あるいは、親戚も...あるかもしれない。
「まんまじゃん、ウケ~るぅ~♪」
ゲラゲラ嗤ってる。
ギャルっぽいヴィヴィアンよりも、2画面に分かれてる“魔術師”とウサギちゃんが対峙した。
彼女がフェイドアウトしたのも確認して、だが。
◇
「今は、回線のひとつが見つかった...ソレだけだよな?」
これは駆け引き。
割り込まれた回線の終着点がズラせるなら、魔術師側の勝利。
割り込んだ側が範囲を絞り込んだら、ウサギちゃんたちの勝利ってとこ。
「さあ」
はぐらかす。
今のところ分かる範囲でなら、東太平洋のどこか――めちゃくそ、広いじゃないですかー!!
咳払いを互いでし合う。
仕切り直したいのは、どちらも同じなのだ。
画角の問題か、あるいはわざとそうしているのか。
互いの通信士が手のひらを挙げる。
魔術師側が『5分』伸ばせ。
ウサギ側は『4分』稼げ。
「――遠路はるばる、ご苦労さん」
堰をきったのは魔術師側。
中継機が方々に飛び立った。
これらがそれぞれの守護門番となって、回線の終着点の妨害をしてくれる。
この時点でも、ウサギちゃんの方では“東太平洋”の西よりって、とこまで割り出してた。
カイザー・ヴィルトの機外では大忙しだ。
中継機が足りないよ!!!
みたいな叫びがおきてて、飛ばした傍から爆発するのも出た。
ああ、これ近づいてるサインじゃ。
「おやおや、この季節は暑いかな? 貴殿の額に大きな滴が見えるようだが」
ウサギの耳が揺れる。
ちょっと分かり易い。
獣だからポーカーフェイスは得意だ。
が、
表情に出にくいだけで、行動には出やすい。
身体をくねくね揺らしてた。
《ったく、時間稼ぎもままならんとは...》