- C 696話 悪役令嬢の進撃 26 -
砲座にはエサ子。
操縦席にアロガンスとウナちゃん。
荷台のスペースにボクと、ハナ姉にコロネさんが着座――ハナ姉は、未だボクの膝枕に甘えてて。
タオルで顔を隠しているけど。
ボクの僅かな母性がなんとなく擽られるというか。
ああ。
ボクにもこういう感覚があったんだ。
誰かの頭を膝に置く。
これを見て、可愛いとか愛おしいとか。
心があったかくなる。
◇
ゴーレムに灯を入れる。
「上からの報告ですぜ」
唐突だけど、待ってたことでもある。
今、この時点では中継点であるゴーレム装甲車が唯一の拠点で。
超高高度にあるボクらの“本拠地”は、ずっとボクらをモニタリングしてた。
恐らくは相当、歯痒い思いをしていたことだろう。
「内容は?」
ハナ姉もこっそり耳は、立ててただろう。
要約すると、両島の海峡付近に“聖櫃”の痕跡があったという。
秘密回線の通信か、或いはデコイか。
「偽報だとしても」
「確かめない理由には成らない」
膝枕のハナ姉と砲座のエサ子がハモってた。
こういう時は頼もしいふたり。
ボクがポンコツゆえだろうから。
「マルが危ないことしなくていいんだからね~」
義姉が下腹を嗅ぎに来る~
前言撤回!!
この変態を誰か止めてー
◆
シュリーフェンの飛行甲板でひと悶着。
観測で上げてた水上器たちが騒ぎ出したからだ。
水上器たちの飛行は各艦艇の独断ではあるんだけど。
それゆえに異変に気が付けたと言ってもいい。
海峡にあるヴィヴィアンたちにも、巨鳥の姿は捕らえてるし不思議にも思ってた。
「追われてるとは聞いてたけど、まさか?!」
魔術師の言葉は少し足りない。
魔界から追われてる。
少し猶予があるから追い付かれることは無い――そんな話は何年前のだ?!
「なんなんよ?! あの大きさ」
セイル上部に上がってる水夫から、撮影させた映像を発令所で見る。
首が痛くなるほどの高度――誰が上がれるのそこ。
息を呑むほどの圧力――翼を広げたそれ、何センチ?! てか、その上の空が黒いんだけど。
笑いしか出ない。
「魔術師に繋いで!!!」
秘匿通信なんて頻繁に繋げば、秘匿できるほどの強度も制度も低くなる。
分かってるけど、これは伝える必要がある。
ヴィネツィア連邦と、スカイトバーク王国の両国から特殊砲弾を誘導してた、潜水艦の消息が途絶えたって話が出たことがある。聞いたとか伝言ゲームの話ではなく、彼女が公爵令嬢として両国高官から直接貰った情報の一つだった。
あの時は、中欧艦隊の連中に見つかったのだろうとばかり、思ったものだけど。
でも、なんとなく納得。
「ああ、あれが」
暫くして、魔術師の不服そうな顔を拝むことになる。
その瞳は寝不足か、或いは不機嫌そのものか。
いずれにせよ三白眼で...
「強度を弱くしてくれて、ありがとうな」
ああ、そっちか。
秘匿通信にキャッチフォンばりに割り込まれて。
シーラビット族が軍人、天領海軍中将代行ウサギちゃんが三者面談に漕ぎつけた、とこ。