- C 688話 悪役令嬢の進撃 18 -
地図の向きは、余程のことがない限り。
展開された上下が“北と南”にセッティングされる。
右が東で、左が西。
ボクの浅い知識でも、これくらいは。
「マル、ちょっとおいで」
ん?
「私が何だって?」
殴られて、吸われた!!!!
べふって頬をぶたれてからの~、ボク吸い。
首筋に顔を埋めて、鎖骨から何かを吸いこんでる。
こ、これは斬新だけど。
ハナ姉、マジ痛い!!
◇
セルフ・アフターケア。
DVをする人にやりがちな「ごめんよ、次はしない。今度こそ、本当に次からは暴力はナシだ。絶対、だって君のことが、大事なんだよ。だから、信用してくれ」って、唇を歯で切って血が出てたら異常なまでの猫なで声になって、ケアとフォローしてくれる。
いやいや。
それは単なる自分勝手な、罪滅ぼしと言うもので。
再犯は確実だ。
そして――ハナ姉もその気があった。
今、ボクの鎖骨に顔を埋めてブツブツ呟いてる。
最早、呪文のように。
一定のストレスで、人は豹変する。
この場合のハナ姉は...
「よし、マル充足率100%に到達!!」
ボクから義姉が離れていく。
と、立ち止まって。
エサ子も唇に指を這わせて、
「や、充足率が急に下がってきた」
壊れたバッテリーかな?
ハナ姉は再びボクの首筋にしゃぶりついてきた。
いああ、ふやけるよ~
「A子、突貫しまーす!!!」
ハナ姉に頭突きをかましてきた、命知らずがある。
浜辺から、ボクたちに攻撃してたあの、A班班長・A子さん。
ボクと大差ないおっぱいと、体躯を持ち。
おかっぱ頭の珍しい女の子。
普段から少年に間違われるようで、乳の大きな女性に『死ねばいいのに』と毒づく性格の子。
今のところ、一緒に戦ったエサ子とは親友になったという。
ま、エサちゃんもリアルでは、いちヌケしたって話だけども。
ここのアバターでは未だ未発達部分は多い。
アンダーな茂み具合とか、貝合わせとか。
「こら!! 何を」
マル吸いを邪魔されたハナ姉は激怒。
状況を整理しよう...
「ボクたちは今、迷子だ!」
誰かが言い出すタイミングがあった。
ボクに皆の目が集まる。
「そして、ハナ姉が指さした部屋は...点検シャフトではなく、どうやら空調室のようで。実に不安なことだけども“凶悪な6枚羽”がゆっくりと、逆回転し始めているように思う」
確か、自称“神”だと言ってたシリンダーのおっさんは、だ。
エサ子の粗相の排出の為に、空調の操作をしてくれた。
さて、その空気の循環はどういう向きだったか?
「部屋の空気を外に排出して」
逆回転している換気扇に視線を移す。
そう、迷ったのはいい。
これから挽回すればいいのだから。
気圧の維持もあるだろうから、入る時は扉は簡単に開いたけど...
「マルさん! これ開きません!!!」
だよね。
そうだと思った。
「みなさんに残念なお知らせがあります。ボクたちは、空気が排出される部屋に入ってしまいました」