- C 686話 悪役令嬢の進撃 16 -
第二波も6発飛んできた。
攻撃はわりと正確で、集弾性もどんどん高くなってきている。
「哨戒器からは?」
操艦ブリッジから問うているから、情報の伝達が襲い。
これが航空艦橋でなら、即時。
ブリッジ内で“ニヤニヤ”してるスタッフが、情報将校を取り巻く。
「地下室にようこそ、御付きの方」
これは皮肉。
◇
航空艦橋でも必ずしも正確な情報が入ってくるとは限らない。
平甲板の上に突き出した司令塔だから、無線電信の中継塔としての役割は十二分だけども。
飛び立った魔法少女と、魔法少年たちに背負われた無線機の交信半径では、現時点でちょっと頼りない。もう少し行動および、哨戒半径を稼ぐとするのであれば、中継する水上器の数が必要になる。
けども。
それ、実は現実的じゃない。
飛行甲板に降りてくる子供たちの身体には霜が降りてた。
甲板の脇から毛布を抱えた整備員たちがどっと、押し寄せる――「大事ないか?! どこか、お腹とか腰は冷え込んでないよな???」って父性が先に立って、少年・少女のケアに心血を注ぐ。
じゃ、飛行隊長の号令で、だ。
『もう一度、中継の為に上がってくれ!!!』なんて頼みにくい。
隊長だから頼んだっていいけども。
整備員たちが鬼と化す。
「魔法少女は何人残ってるか!!?」
司令塔にある提督は、たるんだ目元を指で伸ばしてた。
やや酒気を感じる。
「こんな昼間から」
「提督が寒いと申されたのだ!!」
甘やかすなよって声も上がる。
そんな些末な言葉に反応することはないけども。
御付きの上級将校たちのピリついた眼差しは、声がした方へ睨みを利かせてた。
「練度が低い予備科生で56人、12人を1個中隊とする攻撃隊が5ですからねえ、強襲隊も上げての哨戒任務ですんで...116人と教官14人で120ですかね。あ...言っておきますが」
飛行隊長がパイプ椅子を横にずらして、
上級将校へひと睨み。
やや脅しにも似た凄味のある表情を浮かべて、
「これらの子を全部、空に上げると...このシュリーフェン。戦力の無いただの箱になるんですけどね、それでもいいのなら...自分は構いませんが」
肩を竦めてた。
「それは脅しか?」
眉を搔く。
「水上器母艦ってのは、水上器、つまりは魔法少女と魔法少年らがあって、はじめて機能する航空打撃群を指すもんですよ。ま、艦の側面には駆逐艦に採用された、139ミリの単装砲がハリネズミよろしく突き出しちゃあいますがね。これで何を攻撃するって言うんです」
操艦の事は、操艦ブリッジに聞くしかないけど。
シュリーフェンは、重装甲化を施した結果。
船体の重量が増してしまっている。
その巨体は、ちょっとした戦艦クラスだ。
格納庫には怪鳥ゴーレムが2体ある。
弾薬庫の装甲化も、戦艦の主砲塔防郭並みに厚い隔壁に守られている。
艦尾側面に設置されたエレベーターにも、100ミリを超える防盾が施されてて...
速力27.6ノットで走る。
「では、そのゴーレムを!!」