- C 684話 悪役令嬢の進撃 14 -
“湖の乙女”号からの長距離射撃が行われる。
潜水艦だからって大砲がない――って事はない。現実の世界でも、奇想天外な兵器群ってのがあって。それはもう、アホみたいな想像からリソース無視して建造されたもんだよ。資源は有用、コストはなるべく賭けないでって成るまでのちょいちょい昔。
203ミリ連装式砲塔の装備、大型艦橋の後部に着弾観測用水上機の格納庫を設けた、潜水艦があった。
その全長たるや110メートル。
うーん、ちょっとピンとこない、な...。
ハナ姉ならなんて説明する?
「あん? 110...あー、利根かな」
え、ええ?
いや、それ分かんないよ、ボクが。
「はあぁ、じゃ。有名ドコで大和でいいんじゃね?」
なんか釈然としない。
ハナ姉の興味が、光の速さで遠ざかってく感じ。
ま、いいか。
そのうち。
マル吸いさせろ~とか、寄ってくるに違いない。
あれ、あれで面倒なんだよなあ。
で、話を戻す。
じゃ、ハナ姉が例に挙げた大和型、大和型か...大型戦艦じゃあございませんか。
これの全長は約263メートルだと諸元にある。
半分だとしても20メートルほど余っちゃうけど...ね。
共に水上から見た時、
戦艦に目が行きがちだけど、110メートルもある潜水艦も、なかなかの大きさだと思う訳。
潜水艦の吃水は7メートル、司令塔も含めればギリ、大和型の上甲板に届いた感じかも。
あ~
これじゃあ、大和型戦艦の説明しかしてな~い。
他にも132ミリ連装の多砲塔潜水艦があった。
先の全長と同じ110メートルの船だけど、水上・水中にいいとこ取りしようとして失敗した。
これらの軍艦はそれぞれ別の国で、建艦思想が違うところにある。
まあ、これはいいや。
「マル、おいで~」
ほぉ~い。
ハナ姉、なんか用でもあるのかなあ。
「話、広げすぎ」
殴られた。
思わず、ぼへぇって声が出たし。
口から唾も飛んだ。
かかった先にエサ子がいて、嬉しそう。
「――で、“湖の乙女”ってのは何、ナニ持ってんだ?」
お、解説ですか。
えっと...あ、奥歯で口ん中切った感じがする。
◇
“湖の乙女”号には、短身砲の155ミリ両用砲が連装式で装備してある。
対空・対地、対艦に適した砲弾の使い回しが出来るという意味で、両用砲って呼んでた。
この船の砲身が短いのは、先の時代の教訓から成る。
何れも110メートルに匹敵した大砲持ちの潜水艦は、水上行動中に砲撃が可能である――と、同時に水面に近いとはいえ、平たいところから巨大な火柱を挙げて砲撃するので被発見率は低下する。通常の軍艦と違って、潜水艦の隔壁は分厚い装甲で覆われているわけではない。
装甲帯なんてのもない。
射撃で仕留めきれなかったら、潜って逃げるしかないのだ。
203ミリや132ミリ砲も、約5~10メートルもあるわけで。
引き込む先の防水加工された砲塔内に完全密閉するまで、早くて3分前後。
平均的な訓練評価だと4ないし5分くらいだろうか。
電動力だからって、全部が全部じゃないから...大変なんだ。
さても。
“湖の乙女”号は聖櫃のらの軍艦だ。
まあ、そんな非効率的なコトは無いだろうと思うけど...
浪漫ついでに建造した“多砲塔”。
最大射程は分からないけども、
当艦20キロメートル先にある、上空を警戒してた中欧艦隊の駆逐艦に被弾させた。
射出された砲弾は6。
1発命中で、残りは海上に柱を作る。
「あちゃ、集弾が糞!!!」
ヴィヴィアンの奇麗な声音が聞こえる。
言葉は、アレだけど。