- C 683話 悪役令嬢の進撃 13 -
唐突に、いや。
頃合いを見計らってた全裸のおじさんが声をあげた。
『そんなことなら、点検用のシャフトを遣えばいいじゃろ』と。
不思議な踊りのような動きは相変わらず。
生命維持装置も、いよいよか?
いや、そんなことより。
今まで施設の破壊を試みてたが。
そんな機能があるとは...。
しかし、考えてみれば施設内部の構造は、外観に比べて異常なまでに複雑だった。
施設元管理者である、コロネさんらに視線が。
「そんな機能があるなんて。そもそも、核がこんな状態で、しかも...施設がこういうのだって初耳だったんです。えっと、えっと...」
うん、分かってる。
術式のオーダーは別のチームだろうし、施設の貸与はカリマンタン島の主人だろう。
資料にちょいちょい顔を出す、サバ公爵。
しかし、その公爵だって旧時代の遺跡については素人な気がする。
じゃ、誰が。
『そんな事よりも、ここの機能...つまりは儂の生命維持装置が止まれば、換気扇も止まるんじゃが?』
ちょっと大事なことを、
サンドイッチの具材みたいに簡単に暴露する、おじさん。
「止まるの?!」
ウナちゃんが驚き、斧を投げたエサ子が自慢げに。
「知ってた」
なんて告げる。
ほんとかよ。
疑ってるのはボクだけじゃない。
知ってたとすると、こいつは自殺願望者のようなもの。
心中は御免である。
「じゃ、シャフトの事は?」
「知る訳ないじゃんよ! でも、機械を止めたら換気扇が止まるのは...キッチンに立った時に知った」
そっちか。
それは、エサちゃんが壊したんでしょ。
修理代の弁済が未だなんだけど?
「...ったく」
呆れてるハナ姉。
A子さんもグーぱんで、エサ子を殴ってた。
喧嘩には成らないけど...
このふたりのはじゃれるケモノ?
◇
「じゃ、点検用シャフトで脱出するとして。なにかひとつ気をつける事は?!」
換気シャフトにも繋がってるだろうし。
途中で、プロペラのある部屋には出たくない。
『ふむ...詳しいことは分からんが、儂のマッピング機能では旧市街地...数百年前の古代都市のだが、そこに通じているとみえる。遺跡の真上に作らなかった理由は、大方、直接この部屋への侵入を防ぐ目的だからだろう』
旧市街のと、言えば。
恐らくはダンジョンの方だろう。
冒険者を鍛えるために海エルフ族の祖が、当代きっての魔法技術で拵えたという。
地下迷宮“スウォンジー”。
かつて海エルフ族がこの地に訪れる前。
アヴァロンとも、ブリトンとも呼ばれた“林檎の島”から持ち込んだ技術。
それらを駆使して注ぎ込んだ大迷宮。
そんなのを...
“スウォンジー”と呼んだとされる。
カリマンタン島の天変地異後の御伽噺だ。
この島にアーサーという騎士王もいたとか、いないとか。
「話、逸れすぎ!!!」
怒られた。
「で、その迷宮に行って、どうする?」
潜るって提案も出た。
いあ、潜ってどうする。
「外に出る!」
そういう事だけど。
シリンダーの中の人に皆の視線が集まった。
助けるべきか、見捨てるべきか。