- C 681話 悪役令嬢の進撃 11 -
飛行中の“コウテイ・マンタ”級から受信した情報に、ウナちゃんが唸った。
「ごめん、オナラした」
我慢できずに、こっそり音の無い方を。
待って、待って...
ここ密室だよ。
「「「ぎゃあああ」」」
みんなの悲鳴が...
苦悶の中、救世主現る。
『ワシの権能で』
換気扇が回りだし、遺跡の外へ室内の空気が放出。
と、同時に新鮮な空気が入ってきた。
おお。
シリンダーの中の人、あんたは神だよ。
『少し前から、権能が削られてるけど...ワシは神だと言ったろう?』
ああ、それ。
ボクらが施設壊したり、ウイルスぶち込んだりした結果だね。
徐々に、機能が失われてるんだ。
なんか、ごめん。
『その御蔭か、今、魔物が発生しておらんな』
ほう。
◇
“コウテイ・マンタ”からの情報はこうだ。
西カリマンタン島沖にあった艦隊が動き出したこと。
北カリマンタン島の霧が晴れたことだ。
上空から見ると、島の周囲は霧がかかっているように見える。
恐らくは...
『“迷いの森”という迷宮魔法による作用だろう。迷路という特質から、飛び越されては何の意味もない。故に、目隠しをして“虎穴に入らずんば...”を強要しておるわけだ』
自称神さまが饒舌になった。
ふとすると、シリンダーの中の人が急に早口になったり、言語じゃなかったり。
動きが奇妙になって...
硬直した。
あれ?
まさか、死んだ???
『っ、死ぬかと思った』
生き返った。
理屈は分からないけど、生命維持装置にも多少のダメージがあるらしい。
遺跡の中枢だし、人体を核として術式が構成されているという。
おお、ヤバイしろもんだな。
で、ウナちゃんが唸ったのは。
スカしっぺの誤魔化しではなく、キリが晴れた事の方。
「なんか、ごめんなさい」
あ、いや過剰に反応したボクらも、ごめん。
ウナちゃんも乙女だった。
アロガンスがこの場に居たら、たぶん真っ先に嗅ぎに来てただろう。
と、思うと。
う~ん...彼女も被害者に。
『変態じゃないか!!』
神さまのまっとうな反応。
シリンダーをバシバシ叩く義姉。
『こらこら、割れる、割れる!!』
「んな、細かいこと気にすんな! 禿げるぞ、おっさん」
いや。
もうツルツルだけど。
ハナ姉は容赦ないなあ。
仮に世界に本当の神さまがあっても、そのスタンスは消えないんだろうねえ。
イケメン過ぎる。
「で、このシリンダーのちっこいゾウさん持ちな、おっさんは何?」
あ、そこまで...いう?!
神さまが“しゅん”としてる。
ゾウさんも心なしか、元気がない。
言葉で人は死ぬんだからね。
「ああ、悪い。ちょっとストレートだった...私の手には収まる程度の、だな」
それもダメー!!!