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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1806/2355

- C 679話 悪役令嬢の進撃 9 -

 泉州王府の館に戻ったのは、()()()()が西の尾根にほとんど隠れてしまった頃になる。

 地上の日没との差は、おそらく20分くらいだろうか。

 王府の玄関口で倒れた親王。

 なんの前触れもなく、どさって麻袋でも落としたような音だったし。

 何よりも傍で守ってた従者の視界から、唐突に親王が消えたことには驚いた。

 心労もあるだろうけども。


 一番は、男娼不足。

 まるで日課のように男の子を漁ってたから......

 およそ、彼女にとっては初めての拷問。

 いや、何度も体験した“死”よりも鮮烈な、苦しみだったに違いない...か。


 とにかく、蟄居ってのが彼、いや。

 彼女には堪えたようだ。



 それともう一つ。

 泉州王から役職がひとつ消えた。

 だって、自分ではどうしようも出来ないなんて、弱音を吐くから。

 元帥府と私設軍隊の統帥権が手元から消えた。

 権限は、親王の姉君――皇太后陛下へ移譲。

 まあ、つまるところ。

 後宮府・全宦官数千人の頂点に立つ、太鑑という人物に「仮」という形で貸与される。

 もっとも、管理権のみ。


 一応、東洋軍の()と変わらない勢力になってる訳なので。

 一方は個人の軍隊だから――なんてのは建前で、通じはしない。

 軍事力の行使ってのを行えば、宣戦布告もなしに政府は恥をかいて、政情は戦争状態へ突入する。

 まったくとんでもない暴力装置を放置してきたものだ。



 さて。

 “白服”こと、聖櫃の分派。

 総長を差し出して、自分たちは『他人の褌で相撲を取ろうって』考えたバカ者たち。

 彼らは、熱病を患ってた。

 そういうことにしてある――現地採用で騎士爵を得た、海鬼族の青年は。

 東洋に復讐を誓った元、南洋王国民。

 いや、この復讐は自分自身のただの、逆恨みでしかない。


 分かってる。

 分かってるけど、東洋の市民もすべて良い人ばかりではない。

「如何なされたか?」

 聖櫃とて一枚岩ではない。

 総長と魔術師の理想や理念に共感して、手を取った者たちもあるし。

 何か面白い事をしたいって考えた者。

 或いは個人の復讐を成し遂げたいと考える者、だけど。

 後者の方は、わりと少ないか。



 だって、聖櫃の行動って...社会を転覆させるだけが目的じゃないから。

 人々の意識の根底から、今、目に見える制度をひっくり返す。

 大それ過ぎて言葉にもならない。

 具体的にどうするの?


 そこが問題。

 総長曰く「わっかんないから、とりあえずぶっ壊す!!」と、アホな子だった。

 魔術師ガントは頭を抱えてたけど。

 副総長のヴィヴィアンは爆笑。

 初期の聖騎士らも失笑。

 でも、憎めない。

「え、いいじゃんよ~」

 総長に対する冷笑へ、顔を真っ赤にして反応する子。

 そんな彼女だからこそ。

 皆が思う『俺たちが支えなくちゃな』って。



「いや...」

 海鬼族の青年だって、

 個人の復讐心さえなければ――総長がムキになって転がりながら、怒り散らしてた姿が愛らしく思えてた。彼女を差し出して、取り入って、泉州王から錦魚符ぐんけんかっ攫って振りかざす事も無かった。

 他の支持者は、

「「おお~し! 暴れるぞ~!!!」」

 別の思惑が入り乱れてた。

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