表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1798/2383

- C 671話 悪役令嬢の進撃 1 -

「さてと」

 大柄な騎士の背に座ってた公爵令嬢が尻を上げた。

 騎士から2、3歩離れたところで踵を返す。

「ちょっと何でにやけてるのよ、変態?!」


「申し訳ありません」

 四つん這いのまま動かないけど。

 返事は彼のもの。

「ほら、あのこ...あの失禁しちゃった子を」

 未だ1日が終わってない。

 彼ら白銀の鎧を纏ったふたりの“聖櫃”は、解放されない。

 たっぷり24時間の拘束があって、その条件によって()()()輪番組が密室から出てくる決まり。役目を終えたふたりは、煙のように消えるんだけど...その消失の様は誰も目にしたことが無いとか。

 どうやって...

 いや、そんな事はどうでもいいか。

 女性騎士の姿がない。


「まったく...調整が足りないのかしら」

 城内に常駐する近衛騎士が呼ばれる。

 生贄の不甲斐なさの為に、だ。

 騎士の顔には明らかに不満が滲んでた。

「どこかで油売ってる“シュリーフェン”のお爺ちゃんたちの尻をね。ちょっと探し出して、叩いてきて貰えるかしら?(嫌悪感が滲み出ているのは分かるし、令嬢に対する態度でもない)いえ、本当にこの国の人間は主人に対する...印象の悪い方々ね」

 コロコロと微笑みを絶やさなかった公爵令嬢にも、怒りや憎しみなどの感情もある。

 四つん這いの騎士からも、口笛のような警告が奔ったが。

「黙りなさい!!」

 遮られた。

 椅子の彼は視線を外す。

 近衛騎士の方は、すでに仕置きが終わった後に。

 令嬢の足元に這いつくばるように倒されて、ヒールで踏まれてた。

「い、いつ...」


「わたくしの命令ことばには素直に従うものですよ? あなた方かつて生贄と差し出した“あの子”たちの方が従順で...理解が早い。そう仕向けた躾け済みですが...公爵の娘には敬意を払うべきだと思いませんか?」

 踏み抜くことはしないけど。

 踏み砕かれた方が良かった。

 中途半端に肩が壊されて、へしゃげた鎧の中に肉体が留まってる。

 このありさまだと。

 完治は絶望的か。


 激痛のせいで転がる騎士。

「ねえ、椅子さん?」


「はい、殿下!!!」

 騎士は正座に戻って、平伏していた。

「お時間も近いようですが、中欧艦隊の皆さんに連絡...取り次いで貰える?」


「よ、よろこんで」

 時間外労働はできないけど。

 次の者がキレた令嬢に壊されるのが目に見える。

 同僚を想えば、残り数分でもシュリーフェンを探し出すだろう。



 神を気取る、いい歳をしたおっさん。

 交互に腕を替え、ゾウさんが見え隠れする姿だが――「君たちの意識が飛んだのだけど」


「理屈は後から、でも、要するに時間の操作...ですね!!」

 こう溶け込むというか。

 くにゃくにゃした感覚はスライムボディの時によく経験している。

 上下逆さまになる事も、どこまでも転がりそうなイメージも、だ。

 だから、皆よりも早く自己の壁を作った。


 ただ、気持ち。

 サイコロになった気分ではある。

「おお、凄いね君!!」

 おっさんはゾウさんを隠すようにして。

 見ないように意識しても、誰かの視線から脳裏に浮かぶから。

「儂はな、こう見えても公爵なんじゃぞ」


「はあ、じゃ。ボクは、えっと......ま、魔王で」

 考えもなしにおっさんと、問答しちゃったよ。

 答えも無いから適当に。

 ウナちゃんの肩書を奪ってしまった。

「わたしが魔王だも~ん」

 泣いちゃったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ