表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1796/2360

- C 669話 遺跡をぶち壊せ!! 29 -

 意識が飛んだというよりも、記憶にないことが起きた感じ。

 今のボクたちは、恐らくは()()()()()()()数分前に戻ってる。

 例えば――『空気穴は残してある』と、告げた頃から幾分も経ってないとこで。

 エサ子の嗚咽と、ガサガサという物音が聞こえているところ――推測するに、壁穴の向こうで泣きながらエサちゃんが、空気穴を広げようとしている音だと思われるわけで。

 しかも、

「わたしを置いてかないで~」

 言葉せりふは念話で、声から出る音は『うえっ、うえっうえええええ~』って泣き言のようなもの。

 確かこの後で記憶が飛ぶと、壁に挟まってるエサ子があった筈だ。

 暫くじっと見てても、物音がごそごそ聞こえるだけで意識が飛ぶ素振りもない。

 意外に時間のかかる作業のようだ。

「えっと、ハナ殿?」

 A子さんが真っ青な顔で問う。

 ここの持ち場をエサ子に任せ、409A班は、ハナ姉とともに一旦退く予定だった。

 言葉で勇ましく――『エサ子にここを任せて、私らは陣地の強度を上げる用意をする!!』――と、宣言してた。

 ハナ姉もそれは覚えてる。

 A班からは、味方殺しなのでは?

 とか非難はされた。

 でも、支援であるA班に限界が来ているので、この撤収は急を要する。

 ボクの傍にいれば、ほぼ無尽蔵のMPドリンクの供給が可能だからだ。



 と、いうのも。

 MPドリンクは、無尽蔵とも言うべきボクのMPから抽出してる。

 どこから出してるかは内緒だけど。

 想像しなくていいので、考えないで欲しい。



 ハナ姉は、A子さんの両腕を掴み。

「今しがた、エサ子が私に抱き着いてたのを見なかったか?!」

 目が点になるA子さん。

 頭を左右にゆっくりと動かして、しおれた茄子みたいな友軍にも問いを振り直してた。

 が、誰一人として...

「それが本当なら怖いんですけど、じゃ、じゃあ...肉壁の向こう側で呻いてる、アレはエサ子さんじゃないと?」

 ま、反応的にはそうなる。

 肉壁の向こう側にあるのもエサ子だ。

 記憶が飛んで、穴をこじ開けて(たぶん...)這い出てきた、彼女が涙と鼻水と、涎まじりの顔をハナ姉の腹に飛びついてきて、また飛んだのだ。抱き着かれてた感触と、幾重も回している皮革ベルトの隙間から、湿った吐息を感じたものである。

 ハナ姉は、自分の腹を触った。

 ヌルっとした粘液がある。

「?!」

 ま、そうかな。



 シリンダーの中のおっさんが、叫んでる。

 聞こえる筈のない声が、頭の中に響いたような気がして――意識が飛んだ。

 いや、これは多分、言語だと思う。

 アバターに内蔵された自動翻訳の誤作動か他に考えられるとしたら、翻訳に入ってない言葉。

 ボクの考えとしては、後者だ。

「くっ、これは念話...ですか?!!!」

 外へ向かって発せられていたのは、この()()の可能性。

「うん。不快な音の正体だろうねえ」

 ウナちゃんは顔を覆ってた。

 もしや理解してる?

「いや、なんとなくだ。魔界でもごく一部の種族いや、部族でしか利用しない古代語。こちら側に流出していても何ら不思議じゃないけど。残ってた方が不思議かも...何せ、彼らはこの奇声でのみ意思の疎通を多次元的に行ってた」

 つまり、魔法の祖みたいなもの。

 こちらでは“精霊言語”とか呼んでた。

 スライム・ロードたちでさえ遂に、辞書化できなかった言語だ。


 で、これ壊せるのって話に。

 アイコンタクトで通じ合う。

 精霊言語も、互いにテレパシーに似た奇声のみで多次元ネットワークが結ばれて。

 ボクたちは彼の中に取り込まれてた。

 意識だけの話。


 身体は...物質の世界に置いてきた、かな。

 それって、不味くない?!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ