- C 664話 遺跡をぶち壊せ!! 24 -
遺跡に突入した301は、409に守護させるようボクらを遺跡内部へ送った。
今も、入口際でサバ公爵の1000人と、陣地を作って専守防衛に努めてた。
傷を癒したら、再び戦場に立つ。
死んで躯に成ったら、バリケードの部材になる。
そんなジリ貧な守戦なわけだけども。
「こんな戦も悪くはねえな」
カイゼル髭の人狼がある。
とうに人の姿を棄てて、背水の陣だ。
腕に残る注射痕に、彼の覚悟が見えた。
「俺たちの分のは?」
すべての公爵軍には試験薬が与えられてたけど、死亡後に発動する“種族進化誘発剤”は、その効力がすでに限界をむかえてた。
この時点で死んでも、ゾンビには成れても人狼の成り損ないに無理がある。
あとは...
「奇跡でも信じる外」
「そうか。そうだな」
少し晴れ晴れとした表情がみえ。
死んでもこの先は通さない、覚悟はできた。
代将のふっきれた気分に、友軍も引き寄せられて――「仕方ないですねえ」とか「ここは踏ん張り何処っすね」なんて声が自然と立つ。この気持ちは伝染するようで、人狼たちも襲撃者の爪や、牙を掻い潜りながら「人間が覚悟を決めたんだ! 俺たちが臆しちゃ、バケモンの示しがつかねえぜ野郎ども!!!」声も上がってた。
この守戦に賭ける。
ボクとウイルスに賭けて散る覚悟へ。
一路、遺跡の地下へ向かった。
◆
暴走する聯合艦隊司令部に直上の元帥府が、制止する命令を出してきた。
政府と後宮府も驚いたんだけど、参謀本部も機能停止しちゃってた。
暴走させてた認識はあった。
走り出した車にブレーキを掛ける時期の見計らいが肝だったようで。
「陸軍が陸地を得ちゃったんだから、勝負は余の負けとなる」
新しい肉体を得た、元帥がまっぱで陽光の中にある。
陰ごしに揺れるキノコがゆらゆらと。
「んー、少し左に曲がってるな?」
ぶらりと提げてるだけなのに、立派な太さを誇る。
臣従している者たちは、元帥を直視してはならない。
床に浮かぶ影越しさえも畏れ多いことなんだけど。
「やはり収まりが悪いな...皇子の血筋は、太いのも多くはなったが...被ってる者もおおいのな? ま、そこは割礼でなんとかするとして...だが。前の娼男は抱けぬのだろ」
傍らに立つ少女みたいな少年に問う。
彼も首を垂れて、
「勿論です。すでに穢れに汚染された身。公主殿下の新しき身には、少なくとも従三品の貴族の血統が相応しかろうと推挙いたします」
元帥のまっしろい腕が少年に伸びて、
「お前でもいいぞ?」
「滅相もありません、兄上さま。元帥府の威で、聯合をも鎮めることが出来なかった若輩者。黄泉がえりによりご帰還なされた、生誕祭ですので身内ではなく、ご馳走に舌包をお打ちくださいますようお願い申し上げます」
丁寧な断り方だけど。
生贄の青年たちは小刻みに震えてる。
従三品の貴族と言えども功臣、外戚、身内からの男子となると、嫡男の場合が多くなる。
皇子の血統で夭折した身体でも手に入りにくいのに。
その血統からバケモノが摘まみ食いしたいからの理由で、嫡男を差し出す親も無いわけで。
暴走しているのは元帥府だと分かる。
「この貧相な子か?」
皿に上がってる少年たちは、まだ、子供だった。