- C 662話 遺跡をぶち壊せ!! 22 -
聖櫃の騎士団には、セールスマン的な立場の神出鬼没な連中と。
技術の評価を行う本隊が存在している。
ボクたちが、魔界から追撃しているのが後者の方だ。
活動を止めるのであれば、本隊の方だと考えた。
ただし、かつてスライムの郷に引き込んだ“識りたがりの人々”とは、少し趣が違うのではないかと、ボクは思っているんだ。
と、いうのも。
彼らは純粋に世界の“神秘性”について勤勉だったんだ。
魔法の深淵を覗きたいとする、スライム・ロードたちと同じような感覚。
共感とでもいうか。
そんな彼らが、世界を壊そうと思うのか。
そこがどうにも解せないんだ。
◇
クッコ・ドゥと接触した“聖櫃”は神殿に籍を置いた、騎士のようなナリだったという。
時代的にも、ネーミングのチョイスがらしい。
これが近代的な秘密結社――『黄金の明星団』とか『地を這うスーパー・ナゲッツ教』なんてうので来られてたら、誰も話に耳を傾けず“教会”の異端審問官に売り飛ばしてただろう。どの世界でも、どの時代でも...聖櫃たちは人々を惑わしてきていた。
世界最強、俺Tueeeしたかった男の心も手玉に取って。
「君は何を得た?」
謀神が問いただしたいのは、世紀の大悪党たちが売り込んだ技術だ。
「ふは、ははっ。...あんたをしても分からねえのかよ?!」
下種に顔が歪む。
マキという少女の魂の色ではなく、転生者ドゥの顔だ。
歪んだのちに晴れ晴れしく、穏やかになる。
「手枷のままでは前髪も存分にたぐし上げれねえが、今、俺はとても気分がいいねえ。俺が得たもの、ふふ、ふふははは。時間だよ!! 巻き戻される時間の特異点発生装置。いや、厳密には違うんだったかな...」
術式には別の術が仕込まれていて、アップデート前の時点に強制リカバリーするという“巻き戻し”機能が施されてた。この術式には膨大な、霊的資源が必要となる地脈に直結した遺跡の立地だけでは不十分なので、魔獣とともにゾンビも召喚された。
そしてこの行為が何度も行われると、小さなひずみが生じる。
ブラックホールみたいなバグだ。
弾けたら。
謀神が身震いする――「あんた、そこまでして恨めしいのか?!」
「恨めしいか、さあ、今となってはどうだろうなあ。執念といえば、思念だけで他人に魂還する術式を組み上げるほど、俺は狂ってたのかもしれねえが。そんな意識レベルまで転写は出来なかったようだ。まあ、これは大魔法使いと一度でも他人に呼ばれたかった男の残滓みたいなもんさな」
非常に迷惑な残滓だ。
爪痕を残したいから、他人も道連れなんて発想は幼稚なことだ。
行き過ぎた承認欲求じゃなくて、駄々っ子のそれに等しい。
「同情が出来ねえ」
金縛り中のD班・副班長がぽつり。
恨みが無いとは言ったけども、ドゥの中に『俺は凄いんだ!!!』って心はある。
虐げられてた底辺女子の鬱屈さも糧にして、存在し続けているわけで。
その力はそれなりに濃くて、ウザイ。