- C 661話 遺跡をぶち壊せ!! 21 -
ハナ姉自身がセットしたアラームで起床。
白目、泡を吹いてるボクを見つけ――「マルに一体何が?!」って叫ぶ義姉があった。
助けに入ってたウナちゃんと、エサ子も失神してるんだけど。
コロネさんらは遠巻きで惨状を目撃してた。
あれに割って入る勇気は無かった、ね。
いいんだよ。
まあ、それで。
◆
パン工房の奥。
クッコ・ドゥと対峙する、謀神は寛いでた。
お昼と、夕飯も総菜パンで採ったんだけど――腹にたまるのは憑依されているモブ子で。お総菜パンに舌包みを打った、謀神は満足した笑みを浮かべてた。これはあれかな、高度なWin-Winという関係性なのだろうか、ね。
「口元にソースが付いてる」
ドゥからの指摘。
ずっと見せられてて、腹も空かせてるとこだけど。
手枷の状態で口の端に指、2本を差し向けてた。
「これはこれは」
C班の班長へ顎で指図して。
「このタルタルソースを拭いてくださるかしら?」
ナプキンで拭った。
どこから、立場が怪しくなったか覚えていない。
いや、睨まれただけでシジが金縛りにあったところからだ。
意見することはいい。
謀神だって心の狭い人ではない。
ただ、非常に我がままであるという事だけ。
質問に対して...
答えるか、否か。
或いは、無情にも黙らせるかの気まぐれさがある。
シジはその尾を踏んだ。
「――ありがとう」
さて向き直った謀神と再び、ドゥは対峙する。
「今、気持ち悪い思念でも飛ばして寄こした?!」
ドゥは左肩を竦め、
「はて?」
明らかに知らぬふりを突き通した。
彼女も掌を広げて見せて、
「そう。D班の好みの子に跳ね返してしまったのだけど、問題ないというのなら...うん、助ける必要も無いわね?」
謀神が閉口したと同時に、D班の副班長が悶えだす。
辛うじて状態異常緩和の護符で致命傷は免れたけども、明らかに殺されかけたような悪意がぶつけられた感じがした。班長クラスが持つことが義務付けられる、魔法全盛時代の遺物群――腕輪とか、首輪、指輪にピアス、鼻輪と、臍ビアスに局所パールとか。兎に角、集められた特級の遺物で身を固めることが義務化されてた。
特務機関の嗜みの一つである。
「あんた本当に無茶苦茶するなあ」
ドゥでも引く。
仮に力があれば、多分、似た事をしたかもしれない。
「そう? どちらかというとお互い様な気がするけど」
◇
気を取り直して。
「ボクは君をどこかで聞いた事がある、魔法使いという認識だけど...」
嫌味か、新手の挑発か何か。
ドゥの瞳に殺意が湧く。
「君の方は、おそらくボクを知ってるんだろうねえ?」
オーラの色は、だ。
実物を目撃しない事には、流石に誰かなんて分かる筈もない。
何代か後の子孫がたまたま300年も前の道化師どもと...似た色見のオーラに見えることもなくはない。そうであることを願うばかりではあるのだけど。
「さて、どうかな」
「君は、どこで聖櫃と出会ったというんだい?」
室温が急に低くなった気がした。
ドゥが吐く息が白い。
騒がれると面倒なので、大半の班員たちは金縛りに遭遇してた。
が、その彼らの絞り出す息が白く見えた。
「おいおい...」
一命を取りとめた、D班の副班長の手がかじかみ始めた。
《なんなんだよ!!?》