- C 659話 遺跡をぶち壊せ!! 19 -
グラスノザルツ連邦共和国が所属。
独立諜報組織、特務機関が“301”魔導旅団まで名乗られたカイゼル髭の旅団長と、元409魔導大隊の大隊長コロネさんが対峙する...直ぐその隣に、スク水にお腹上からの半身だけセーラー姿なエサ子も鎮座、不思議な三角関係が存在してた。
特務機関同士でも、コロネさんには面識がなく。
カイゼル髭の理屈で行けば、409大隊は確かに存在したけど“化け物”じゃなかったという。
至極ごもっともな、ご意見が寄せられて。
つまり物凄く疑われているんだけど。
誤解の無きように、懇切丁寧に説明中だ。
何せ、一歩間違うと。
極めて怪しく得体の知れない一群が、都市の中を窺ってたわけで。
遺跡が見せる幻術でなくても、十分に気味の悪い話だという。
「そんで、ボクたちの命もかかってる」
ボクの脇に立つ、燃えかけた...いや、もう殆ど燃えてた班長A子さんと。
怖い顔をしているハナ姉の制止に苦労する。
両手の人差し指を挙げて、
「まあ、エサちゃんのお手並み拝見ということで」
「ぐるるるr...」
猛獣使いになった覚えは無いんだけどなあ。
◇
陽が昇るまでは未だ、少し時間がある。
3度目の襲撃を企画してた、旅団は前回の襲撃始点と同じ家屋に潜伏してた。
襲撃始点を替えないのには理由があって。
「受け身? ですか」
エサちゃんのセーラーに光る襟章に感謝。
海軍の“少佐”である身分が識別できたのだ。
いや、もっとも照会先である“オウル”級潜水艦艦長に、感謝せねばならない。
飛び出したまま帰ってこなかった、放蕩娘の見受けを代償なしに引き受けたからだ。
「攻撃に対しての防衛は、ドがつくほどの鉄壁さがある。が、あくまでも攻撃されたから自衛している、そんな雰囲気があって。攻め手に対しての追撃は無い...ただし、これは夜のうちの襲撃に限ってだ。昼間は...わからぬ」
改めてエサ子の口から「彼らは味方だよ」と告げられて。
カイゼル髭の目に涙が見えた。
これはサバ公爵軍の1000人らも同じだ。
「ときに」
内密にという申し出。
エサ子とボク、旅団長だけでひとつ奥の部屋へ移動した。
ハナ姉は、ウナちゃんと部屋の入口で壁になった。
「409の事なのだが?」
種族進化に驚きがある。
特務機関でも、文献を頼りに様々な実験が行われて。
およそ非道も通り越した数を熟してた。
結果、生まれたのが――200番と300番シリーズと呼ばれる、人工ライカンスロープの部隊である。
魔術的に肉体の強化を施し。
そこに錬金術で合成された人狼血清を投与。
しかも、肉体が死んでも魂魄は機関の幽室で、肉体を得て再び蘇るというのだ。
ちょっと聞きかじると、それ拷問じゃない?
死しても解放されないなんて。
「進化は定められた条件によって、無数の可能性が...」
「いや、そういう事ではなく。409のようなゾンビが不死王へ辿り着ける。その技術は、その1度きりのものだろうか? 再現は、できない...とか」
カイゼル髭は、遺跡の破壊よりも優先すべき情報を得たようだ。
ボクのミスはだ。
彼らにコロネさんたちを引き合わせたことなのだろう。
「目的が」
エサちゃん、ナイスフォロー。
彼女が旅団長に平手みたいな“喝”入れをした。
「ああ。いや、すまない...我々も」
咳払い。
喉の調子を見直して――
「遺跡の破壊に2度挑み、2度も失敗して戦力は半減。正直、3度目は自殺もいい状態だった...我らは死しても蘇る。経験済みとはいえ、実のところは死にたくはない」
震える腕を見せた。
それを片方の腕で抑えてるんだけど。
「壊せる目途は?」
「いや、遺跡内部にある術式の核だけだ。ただし、何重ものセキュリティを突破する必要があり容易ではない。工房の連中が優秀であると仮定した場合は、彼らが作ったウイルスも効かぬかもしれない」
そこでエサちゃんは、ボクの手を引き旅団長へ引き合わせた。
これが目的で連れてこられたのかな?