- C 658話 遺跡をぶち壊せ!! 18 -
渋るコロネさんたち。
浜辺からボクたちの船に攻撃してた班長が口を開く。
「ゾンビを餌とする化け物が居たからだ」
ま、浜辺でそんなのと戦ってたから分かる。
その魔獣を食料にしたエサちゃん曰く。
フライドチキンみたいだった、と。
えっと...
そいつらの食事は、ゾンビなんですけどね?
「それも理由の一つですが、もっと大きなことは...精神攻撃から逃れたかった、です」
身に着けてた護符で精神破壊は免れたが。
同時に身を焼く諸刃の剣となる。
班長の反応はちょっと違うみたいだけど。
リーダーたちと彼女だけのとはずいぶん、差があるような。
ずっと、あの場から逃れてきた理由が...
“食われない為”だと思い込んでたようだ。
いや、真実に班長は、そうだったのだろう。
意思の疎通はしてて、おねが~い。
「も、もしやその護符、神聖系のですか」
一旦、身に着けてた護符の話に引き戻す。
ウナちゃんが恐る恐る、スカスカになった“守護の守り”を掌の上に載せてた。
コロネさんからは『もう、効力は無いですよ』とのことだけど。
魔界の人々にとっての(人間界サイドの)教会の護符は“観光地にある木刀”レベルで、必要ないのに買っちゃうような類のものである。
ま、要するに...興味がある。
「ええ。魔法使いが神聖系のソレを使うなんて...笑い物ですよね」
ボクは、嗤わない。
いいんじゃないかな、どんな護符でも。
かつての教会の連中だって、魔法くらいは使ってたし。
祝祷で火炎球とか。
祝祷で氷柱を落としたりとか。
祝祷で巨石を降り注がせたりとか――「その魔法はエグイな?!」ハナ姉が絡んできた。
◇
ふんす――スカスカでご利益の欠片もなくなった、護符からウナちゃんの興味も無くなった。
「大事そうに返すとこは、ちょっとした常識人だよね」
バカにしたわけじゃないけど。
わたしにはゴミだ!とか言わないのは、マジでエライ。
返却された護符が班長に渡る。
で、彼女が白い炎にまかれて燃えかかった――ちょっとしたボヤ騒ぎだ。
「ぐああああ!! なんでこっちが燃えるんだああああ!!!!!」
いやあ。
まだ城壁にへばりついてるだけなんだが。
彼女が燃えたこと。
彼女が叫んだこと。
物静かだった夜に水を差したこと。
色々、良くない方向に転がる事は、連続するものだということ。
護符を手放したら、班長がボロ雑巾みたいになって解放された。
「ありゃりゃ、この子に信心深さが残ってたみたいですね?」
護符の効果を信じていれば、おそらくの仮説ではあるけど。
神様の神通力が繋がるのではないかと言う説がある――証明はされたか不十分だけども、班長が燃えたのが証左かも。自分で願掛けして邪を払うとは、自家発電もいいところだが。
その結果、城壁の上で見回りしてた兵に見つかるというお粗末さまで。
「ねえ、あんたさ。わざとじゃないよね?」
静かに憤るコロネさんと、
小銃で脅され、連行を余儀なくされた班長さん。
彼女、A班のA子って名前の海狼族のケモミミっ子だった。