- C 652話 遺跡をぶち壊せ!! 12 -
「スカイトバークの魔女か?!」
首から下が動かない。
特務機関の位置を正確に抜いて、かつ施設内すべてを縫い付ける技量。
賢人会をしても『神業』と言わせるセンス。
「偽装魔法があって何故、位置バレを???」
「まさかスパイが」
なんて詮索しても始まらない。
この攻撃に敵意はないとみえる。
魔法使い同士の戦いに次戦はない。
初撃必殺。
どこかの剣豪みたいだけど。
対策される恐れがある術なのだから、初見殺しでなくてはならない。
不死身の肉体なら...ワンチャン。
「お目こぼしか」
バアちゃんのひとりが、そんな事を呟いた。
次の機会があっても、出し抜けるという余裕から来るのだろう。
◆
一方、ぴんく☆ぱんさー局部では大問題。
大量の間者を送り付けて、それこそローラー作戦の地道な努力の末に見つけ出した成果が、総長のせいでフイになったのだから目も当てられない。盗聴と盗撮していたことが、恐らくバレていると勝手に解釈したんだけど。
双方とも、相手を高く評価しただけに終わる。
◆
さて、パン工房の奥の部屋――
班員内からひとりが歩み出てきた。
シジや班長の脇に立つと、
『憑依術は得意とするところでな。ふふ、やっと皆さんと会話ができる機会に恵まれた』
まあ、こんだけやって悠長なのは。
工房の輪番組も機能していないからだ。
各局や、派遣されている各隊に攻撃魔法、或いは防御魔法を納品する“工房”は、城内のセキュリティにも携わる。攻撃されているのであれば、その対応に追われている筈なんだけど...。
残念ながら侵入はあっさり。
内側からこっそり仕掛けられた。
「て、ことは......俺たちは、福神漬けにもなり得ない木っ端ってことかい?」
D班の副班長。
腹をくくった自分の覚悟に詫びを入れてるとこ。
相手にされていないなら、謀神の目端でちまちま精神攻撃したところで『やだ、汚れ着いちゃったあ~』なんて会話しかならないか、そもそも無言で払われる程度だという。
ちょっと気の毒過ぎる。
「ああ、なるほど...なるほど。彼らが学生で、こっちは道化ということか!? どこの誰かは知らんが懐かしくもあるオドを持つ魔女よ、キサマは何者だ!!!!」
謀神の漏れる魔力には確かに見覚えがある。
ドゥの生前に相対したことがある、気がする。
帝国の創成期は、それこそ魔法全盛期だ。
名だたる魔法使いが各国にあって、センスがあれば宮廷魔法使いなんて職も得られた。
ま、これは実力とカネとコネがあればというセンスの話。
招聘されるほどの実力となると、災害級であるか。
勇者的興行でもして名を売る外なく。
そのどちらもまた、運。
全盛でも、実力がすべてとは限らなかった。
さて、ドゥさんあなたは?