- C 650話 遺跡をぶち壊せ!! 10 -
さてこの状況――
少数精鋭には見えないだろう。
種族進化に到達した者たちには頂点にロード種のコロネさん。
ジェネラル種に班長を含めた、元リーダーたち7名ほど。
A班からH班までの7組が健在(実はE班は食われて全滅してしまったので)――約70の兵士が元409の最大戦力だという。ただし、元人間の兵士だからって銃剣格闘なことができる訳じゃない。
生前のような戦術が不死者になったからと言って有効とは、限らないって話をしている。
ヴァンパイアへ種族進化したので、物理攻撃の方はめっぽう弱くなってしまった。
魔法攻撃による与ダメが10、物理の与ダメが2か3か...で、耐性も“状態異常”への高い振れ幅によって見た目、硬くはなったけども...神聖特攻が刺さり易くなってる弱点が目立ち過ぎるかな。
戦力としてカウントするならば、後方からの火力支援ってことだろう。
あとは、進化に成功した新しい眷族には、種族ギフトが与えられる。
彼らが手にしたのは“魔法適正”というものだった。
もう少しいいものを与えたかった。
親戚になったのだから例えば...
“魔法錬成”とか“耐性強化”なんかもあると便利だしね。
コロネさんは、優しく微笑みながら。
「いえ、わりと嬉しいギフトでしたよ」
と、告げてきた。
“魔法適正”――真祖に近しい能力に加えて、現不死王らロード種の全属性対応にかなり似た性質。魔法の火力が極めて低かった409魔導大隊は、これで一人前に戦えるようになったと、皆が喜んでいるようで。
「それなら」
「じゃ、行きますか?」
浜辺の砦から夜のうちに移動することとした。
◆
何日目の夜だろう。
都市北部の発掘地域――静かに稼働中の遺跡は白く眩く光ってた。
霊脈に充てられた変電所から延びるケーブル群のそれぞれは、サーチライトに繋がっていて、遺跡とその上空と周囲を照らしている。まるで昼間のように明るいのだけど、人の気配がないのに人影めいたものが薄らぼんやりと見えていた。
透かし絵の人形劇みたいな雰囲気。
個人的な見解...そ、それ、パーテーションの壁が薄くなってやいませんか?!
こわっ。
サーチライトの光は、はるかに高い位置にあった“コウテイ・マンタ”の影をも浮かび上がらせてた。地表にある魔物たちが騒いでたようだけども、届くものがいるはずもなく。まあ、照らされて迷惑だったのは、その日を決行日と定めてた301の連中だったろう。
誘導が反れた特殊弾頭は、不発弾として遺跡の魔法装置の脇に落ちてた。
これは遺跡の防衛機構。
衝撃と共におよそ1度きりの“巻き戻し”が発動。
攻撃の僅か数分前のバックアップデータと、破損した部位を置換し直した。
この大魔法によって砲弾は、不発弾として記憶された。
事象の再現がされないのは認知されても、記録されていないからだと推測できる。
「16インチ級の砲弾のようだな?」
観測所から、転がっていた砲弾を見つけている。
1日が終わる度にひとつ転がってた。
どうも最近、目にすることが多くなってきた。
遺跡のすぐ近くで戦ってた魔物や、ゾンビは蒸発してるようなんだけどね。