- C 649話 遺跡をぶち壊せ!! 9 -
「それじゃあ、こちらからも一つ伺います」
ナマズ髭の代将から。
「帝国の特務機関から派遣されたあなた方は、何の所縁もない地で死ねますか?」
ちょっと意地悪な質問。
口にした代将も分かってるけど、後がない者同士なら連帯感が生まれるかも。
淡い期待が胸にあった。
「そうだな、正直に言えば全滅する気はない。が、公爵軍を盾にして戦力の温存と言う下策も考えてはいない。...ふふ、人狼が肉の盾を用いたなどと汚名もいいところだ(苦笑しつつ、口がへの字に曲がる)...魔女らに弄られた身体を人間種らに見せつけてやらんとな!!」
遺跡が、人の手で壊せるのであれば破壊は公爵軍に任せる。
ダメもとでの決戦だった。
◆
種族進化を終えたコロネさんは、不死王ヴァンパイア・ロードへ。
とはいえ、純粋な...ではなく。
亜種のロード種になった。
これはボクの眷属にちかい。
本物の不死王には高い耐性能力の代わりに、コウモリなどの変身能力が欠落していた。
変化しなくても、魔法への適性が高いので生前の得意属性に縛られることなく、あらゆる全方位的に魔法が使えるようになっているもの。
そういう個体は、王・公である“キング種”から実績を積む以外に突然変異することは無い。
いや、上位種に進化するかも未だ、解明されていなかった。
ボクの研究をもってしてもだ。
「じゃ、何で私は?」
コロネさんが繭から顔を出してる。
進化を終えて羽化した繭から出る気配がない。
「あ、もう出てきても...」
素っ裸なんで恥ずかしく――おおっと、こりゃ気が付かず。
バスタオルを彼女の頭に掛けた。
「亜種とはいえ...ロード種に変異するには繋がりが必要です。えっとですねえ、この場合は...ボクの親戚になったという扱いをでして。スライム因子を植え付けさせてもらいました! いや、プルプルのスライムになる訳ではなく、変化能力を保持したままロード種になった訳で」
真祖と同じ能力もある。
409の元隊員らはヴァンパイアへ進化した。
と、同時にロードとなったコロネさんの血脈に入ることになる――この辺りは、先に了承済みで。簀巻きにされてた班長も同様である。若干、渋ってはいたけどもコロネさんの説得によって、ゾンビよりかはマシとの結論に至る。
で、だ。
「これで状態異常は?」
「だいぶマシにはなってると思うけど」
エサちゃんが、吸血鬼らを集めて“アシッドレイン”に放り込んでた。
戦慄する班長、酸の雨の中ではしゃぐ吸血鬼たちとの温度差。
「えっと、みんな大丈夫?!」
「なんか肌にチクチク来ますが、ちょっと心地いいというか」
おそるおそる手を伸ばして、酸の雨に触れてみた。
ああ、確かにひりひりする感じである。
「例の音...ですけど」
ボクは首を横に振る。
それは都市に入らなければわからない。
ボクだけが正気かもしれないし、ボクも含めて錯乱するんだとしたら...OUTだと思う。
「アロガンスはお留守番だよな?」
ハナ姉が背に立ち、周囲を見渡す。
コロネさんたちは都市と遺跡の水先案内であるが、シイタケ頭の船長たちは。
「残るべきだろ? 陸に揚がれば海の死神は役には立たぬ。だが、砂浜の砦と装甲車を護る程度であれば、全身全霊で守り通すと誓ってみせよう!!」
タコ頭の船長も親指を立ててお見送り。
分かってた。
「ウナちゃんと、エサちゃんは?」
本人たちは行く気、満々だから。
外す理由は無い、か。