- C 645話 遺跡をぶち壊せ!! 5 -
「う、ウナ逃げないもん!!」
すんすん、鼻を鳴らしてる。
病衣みたいなのに着替えてて、
「下がスースーする」
なんて言わせてた。
「ねえ、副長?」
ノワールさんの目が据わってて。
メガネエルフを見上げてた。
「あ?!」
やや棘のある物言いだけど。
ちゃんと返事して。
上から下々を見る。
「ウナちゃんのこの姿、公言すんなよ!!」
「誰が、するか。てか、俺に親しい野郎なんか......、い、いねえよ」
間が空いた。
仕方がない。
脳裏に呑み仲間のアロガンスが浮かんだ。
が、アレに話したところで胸の中に仕舞ってくれるだろう。
そう、思ってしまった。
「っち、」
舌打ち。
「そこだよ、公言すんな! ウナちゃんだって女の子だ。好きな野郎に知られたくねえんだよ。空気読んで即答しろ!!! ハゲがっ!!」
ノワールさんも染まりましたね。
怖いんですけど。
◆
ゴーレム式8輪装甲車の下に、母艦から補給物資が届く。
この補給は不定期なんだけど。
前回との間からすると...少し...
「間隔は狭いですけど、艦長から指示でして。なんでも、嗜好品が足りないとの要請があったとか」
身に覚えのない要請。
ボクが倉庫の在庫をチェックして、レンジでチンしてるんだが。
嗜好品?
首を傾げてた。
「ええ。その使者にウナ陛下が」
え?! い、いつのまに。
彼女を船に転送してたのは、ハナ姉だ。
もう、この人は。
「じゃ、受領書のハンコはここと、ここ...ウナ陛下の受領は、お尻のここに」
スタンプ押すとこじゃないけど。
ウナちゃんが病衣なのは。
「う、うぐ...任務失敗」
「ハナ姉の無理を聞いてくれて、ありがとう」
三十路の小さな女の子をハグしてあげる。
こんな子に何してくれてんの?
「ハナ姉も、ほら!!」
装甲車の影に隠れてる、そこの人。
顔を出し難いのは分かるけど。
「マル、それ私じゃないからな!!」
黒い影は、ハナ姉だが。
仕掛け人の方は...
「陛下にしては良くやった方ですよ。任務はまた、ほとぼりが冷めたら」
アロガンスが彼女の頭を撫でてた。
お、お前か!!
いや、だが、何故。
「――マルさんにも要望出しましたよね? 覚えてませんか...酒とグラビア本と、煙草にテ〇ガ。(やや空を見てから、咳払い)酒とアテと煙草です...忘れちゃったかなあ? 母艦にも同じ要求をしたら、なんと言ったと思います?」
ボクは考えてみた。
フリじゃなく真剣に――アロガンスは痺れを切らして「担当責任者を通して申請しろですよ!! そりゃ、まあ。個別に要望を聞いてたらキリがないってのは頭で分かってる事ですがね。それでも悶々と溜まっていくもんがあるんです、ヌキたいときにヌケない苦しみ」拳を握り、顔を覆って歯ぎしりが聞こえる。
なんとなく、なんとなくだけど。
ハナ姉も共感してて。
「分かる、義妹でヌキたいのにイメージが足りない時が、私にもある!!!」
「姐さんもかい!?」
ふたりがタッグを組んだ。
厄介なことになったぞ。