- C 644話 遺跡をぶち壊せ!! 4 -
取り押さえられた軽犯罪者。
ウナ・クールの前に、キルダ・オリジナルと巨乳姫、ウサギちゃんら幹部が揃う。
ブリッジの指揮は、副艦長に一任されて。
おっと、末席にノワールさんに三白眼なメガネエルフが鎮座してた。
「なぜ、俺も呼ばれてる」
キルダさん曰く『なんとなくだ、遊んでる暇そうなのが...お前たちしかいなかった』酷い評価だ。
彼女のセリフを訳すと。
3人の幹部よりも部外者で、しかも冷静な判断ができる。
身内の注意勧告だから、正当かつ適当な刑罰が望ましいと思う...まあ、そんな企みであろう。
「素直じゃないなあ」
ウナと、ノワールさんの声音が重なった。
◇
軟骨の軋み音が鳴る殺風景な部屋。
尋問室と呼ばれてはくぃるけど、そんな部屋を作った覚えはボクには無い。
たまたま、誰も入居していない空き部屋に、たまたま机と椅子を置いて...もう、たまたま“おっかない”部屋にしたという流れなんだと思う。それなら備品整理室とか、倉庫あるいはぶっちゃけ客間でも良かったはず。
なんで、また。
ぶっそうな部屋作るかなあ~
って思うところ。
「たまに出るんだよ、長い航海に出ると手癖の悪いやつがね」
話を切り出したのは、巨乳姫だ。
無駄に重そうなスイカ級を左右に、それはもう自由奔放に動かして。
両脇に座るキルダさんとウサギちゃんの目に殺意が浮かぶその中で。
「艦内の生産科の連中が水耕栽培だの生け簀だの、人工飼育だので育てた食料を...自分一人分少し多めにとったところで帳簿のミスは、後でどうにもなるとか思っちゃってるおめでたい花畑脳の輩が」
両脇の目も似たことを考えてた。
《その駄肉、見せつけてマウント取る気か、ゴラァ!!!》
みたいな殺意。
肉、
肉、
肉...
発作が。
キルダ・ファイルに発作の兆候――だって彼女、年頃なのにぺたんこなのよ!!!
◇
「キルダ閣下には退場して貰いましたが」
ノワールさんの方へ、ウサギちゃんの人参先が向けられる。
また、腰のホルスターから。
いや、これは肩提げのものらしい。
「こっちに振りますか?」
巨乳姫の視線もノワールさんへ流れてた。
「航海中の食料品は命綱ですから、船乗りとしてでなくともサバイバーとして理解できます。しかも、この方は初犯ではない!! ウナさんも不思議そうな表情を繕っているようですけど、帳簿係に直接の生産科として納品している私がひとつひとつ再度チェックしているので、ね。ちゃんと事情を知っていますけど...」
これ、反省の余地あります?みたいなノリで指さされてる。
青白い表情のウナちゃん。
「お、おとい...」
「トイレじゃなく、転移で逃げる気なら止した方がいい。今、この艦は海の上を航海している...い、いや。南沙諸島だったところの海域を最大戦速で旋回している最中だ。ここの中では感じない重力が飛び出した瞬間、どうなるかは私にも想像がつかない!!」
ちょっとした脅しだ。
隔壁ひっぺ剥がしてパラシュート背負って飛び降りるならまだしも。
座標設定なしに船から飛んでも、まあ、空の上だろう。
ただ、無茶苦茶寒い空の上だ。
巨乳姫の脅しは怖い。
艦長であるウサギちゃんも、引いてた――「魔王、泣かしてどうすんだよ」
「え?!」
見れば、ウナ・クールが大粒の涙を零させて。
膝を抱え、踵から滴がしたたり落ちて、水たまりを作らせてた。
トイレは真正の要求だったようだ。