- C 643話 遺跡をぶち壊せ!! 3 -
ウナちゃん部長まで行ったけど。
殆ど親の七光りみたいなトコが大きい。
オーナーと身内同然なら、ポストの一つや二つ。
まあ、この辺の話はいいか。
段ボールの重さと勢いだけで走ってたから。
急に重くなった箱はその場に落としてた。
よく足に落ちなかったなあ。
「観念しましたか?」
「いつから?」
目の前には同じくらいの背格好の女子。
いや、廊下に盾持ちの警備兵もある。
「いつから...その時々にです。ブリッジや、食堂、機関室とか...兎に角人の目が多いところに、印象づかせるよう顕れては、わざとらしく爪痕を残して行く。その次の瞬間には魔王が居ないんです。最初の数か月は誤魔化されてました、偶然だと」
持っていた人参の先で、ウナちゃんを指す。
それは腰のフォルスターに刺さってたものだけど。
銃ではない。
食い物だ!
今、齧ってるとこ。
「で、違和感はほどなく...です」
食糧備蓄が少なくなってたこと。
1箱か、多くて2箱未満。
たぶん持ち出せるギリギリの量だ。
「その頻度はそう大して多くはない。数えました、無くなってから1週間、2週間...そろそろ箱の中身も怪しくなった頃だと思っても、窃盗犯は現れないんです。なぜか、その箱に手を出していないからなのです!」
ひと間ほどの呼吸。
「では何故、窃盗犯は箱一つを持ち出すのに、わざとらしく爪痕を残すのか。悩みました、で(齧り掛けの人参がウナちゃんの方へ向けられた)何となく輪郭が分かったんです。あれは共犯者のいる嗜好品だと。そうなると、子供っぽいことをしている魔王らしからぬ品物を盗んでいるんだと!!! お酒です、呑めませんよね? 三十路にもなって酒の味も分からないお子様の舌を持っている」
ふぅーっと息が深く吐かれていく。
人参をカリカリと齧る音は、甲高く聞こえ。
人々の喉は成る。
「アロガンス将軍...いえいえ。あり得ません、あの方が魔王を顎でこき使えるはずがない!! 何せ、滅法小さい子が大好きで甘々なお方です。魔王、エサ子さん、マル殿に踏まれる為ならば、自分で何かしちゃうような変態ですから、あなたをここに寄越す筈がない!!!!」
「そこまで分かってるんなら」
ウナちゃんは両手を上げてた。
たるんでた服のポッケから酒瓶も覗く。
「輪郭は分かっています。しかし、どうやってとか...そもそも何故、何度も往復しているのです? あなたの遊び相手であるオリジナル様も居られるではないですか!!!!」
キルダ・オリジナルのこと。
ファイルの方は、天領の皇と背格好が似ているので、社会科見学とか城を離れる時には“影武者”として鎮座しなくちゃいけない仕事がある。故に、彼女の乗船から渡航は赦されなかった背景があった。
ウナちゃんは目をばってんにさせて――「私だって、地上の様子が見てみたかったんだもーん」と叫んでた。
いや、彼女の本音はそこでもない。
ボクらと旅がしたかったのだ。