- C 642話 遺跡をぶち壊せ!! 2 -
外の世界では、砲撃による爆撃で。
遺跡は圧倒的な熱量と重量によって灰燼に帰したと思われてた。
すくなくとも、スカイトバークの謀神は盗聴の御かげで目が覚めた状態だった。
ついでに。
もう一つの案件。
カリマンタン島の超高高空に存在証明された、黒い点についても盗聴の御かげで外堀が埋められた。
最も連邦共和国とて、急場凌ぎの天体望遠鏡で姿を捕らえたという。
「もう殆ど、空がダークブルーに染まりかけている高度にあるとのことです」
謀神は部屋の端から端までを往復しながら唱えた。
落ち着きがないと制止する声は上がらない。
「こちらが打ち上げた弾頭も彼らからすれば、上がりきる前に撃ち落とせた可能性。そうしなかった理由は分かりませんが!! いずれにせよ...こちらが知る技術ではその高さに船を打ち上げたままにする事はできない。つまり...」
「脅威、ですか?!」
「です」
総長の動きが部屋の中央で止まった。
その高度にあるという事は、射出した地域も握っているだろう。
今、欧州連合と言う大きな枠で東洋と戦っている背後から、中央諸侯連合は狙われた訳だ。
これは世界戦争になりかねない。
いや、したんだ。
スカイトバーク王国の単独犯じゃないんだけど。
今のところそういう事になっている。
「サバ公爵令嬢は、凄い娘ですねえ~ 一枚岩ではない“東欧諸豪族”の足元を見て戦争...楽しんでいます。ああいう子は叩き潰したいところですが。私に歯向かってこないところも...やり難いのですが」
スカイトバークそのものに実害はない。
ただ、東欧諸豪族の方は無事では済まないだろう。
『俺タチ、兵ハ出セナイ。物資ノミ出ス』ってな片言の共通語で欧州連合に参加して、旨い汁だけを吸ってたと思われる。
ちょっとだけ気の毒に思った。
総長の眉が八の字に下がって。
「こんなことが出来る輩は、ボクの知るところでは聖櫃。東洋に手を貸し、南洋を唆し、サバ令嬢の下でも暗躍して、連邦にも毒牙を伸ばす...稀代の引っ掻き回し屋の、聖櫃騎士団しかボクは知りえません!!」
スカイトバーク王国は、その聖櫃とも戦っている。
かれらもちょっかいを出されて、国が傾きかけた経緯があった。
ぴんく☆ぱんさーなくして、今の王国もない。
「彼らの掲げるスローガンは面白い。面白いけど、それはボクの趣味とは合いませんので、断固拒否したいと思ってる次第。みなさんは(人差し指を天井に向ける総長に、皆の視線が集まる間があった)、ボクと足並みをそろえて共に戦ってくれますか?!」
総長の執務室には、幹部の十数人のみ。
その彼らから拍手が起こり、副総長もいつもの硬い表情をほころばせてた。
結局、謀神のことが大好きな熱烈なファンで固められたクランってことで。
◆
空中要塞とも認識され始めた“コウテイ・マンタ”級飛行艇の廊下を奔る子がある。
食糧庫から持ち出せらのは、戦闘レーションが詰め込まれてある段ボールひとつ。
それと、ポテチにドライフルーツと、酒だ。
酒瓶の方は干し肉も一緒に、くすねてきた。
今頃は、管理部の連中が帳簿に合わないと紛失した分の在庫調査をしているだろう。
「ええ、毎度、毎度同じことされるんでね。今回は、見張り番を立てておいたんですよ!!!」
行く手を阻むものが現れる。
奔ってた子の脚が止まった。
短い脚でよくもここまで――って、声も上がるものの。
「魔王たる自覚、持ってくださらないと」
犯人はウナちゃん。
いや、たぶん共犯はハナ姉だろう。
彼女にこんなワル知恵は浮かばない。