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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1766/2368

- C 639話 大魔法使いの残滓 19 -

「この世に未練があったから、化けて出たのか」

 パン工房に足を踏み入れたのは、イレギュラーズのD班員。

 総菜パンを求めて直接、工房へ訪問しに来た。

 こういう事はなくもない。


 だから、店ではなく。

 奥の工房でマキを追い詰めてたのだけど。

「はて、部外者だよね、キミ?」

 頭二つ上からのドゥと対峙する班員。

 C班の長からは「精神を侵されるぞ!!!」って警告が飛んでた。

「もう、遅いよ。彼にも俺のスペルは届いてる」


「ああ、聞こえてる。気持ちの悪い耳障りな声音なんか聞かせやがって...誘惑ならもっと甘い声で囀りやがれ!! だが、()()()()()の声は悪くない...もっと傍で聞きたいくらいだが」

 侵蝕を跳ねのけた者、現る。

 まあ、これも想定内だ。

 現にC班はふたつに割れている。

 要するにスキがある者が侵食されるという意味で。


 ん?

「は?」

 え?



「だから、マキちゃんの声なら堕とされてもいいと言ったんだが、通じなかったか?」

 知り合いですか?って間抜けなセリフが飛び交う。

 お留守番組のヒエラルキー最底辺の彼女は、いつも余り物の総菜パンに半値をつけて販売してた。

 その常連である。

 普段とは違って、明るくころころと笑い、照れ隠しに耳を隠す所作まで。

 彼に見せていた。

 D班副班長の彼に――「マキちゃんみたいな潜在能力が高い子に憑りついたんだろうけど、彼女の資質ふんどしで仲間を傷つかせるってのは、洒落にならないぜ...どこの魔法使いか知らねえが!!」ちょっと冠だ。

 明かりが見えたから工房おくにまで足を伸ばしたら、こんな修羅場に。

 しかも、目当ての彼女は籠の鳥になってた。


「浸食を受けない魔法使いは、かつての世界にもあった。だが、あれも過去の話...湖の魔女ルサールカももう居ない!! ようやく俺様のターンが回ってきたんだ!!!!」

 指を弾く。

 スペルはあくまでも“演出”の範疇で。

 彼の得意とするのはイメージ通りに実行できる魔力操作力。

 無詠唱からの再現性といったところか。

「がはっ」

 D班の副班長が大きく仰け反って、対岸の壁に打ち付けられてた。

 影のような黒いひも状の、腕による打撃。

 喰らってみると、見た目以上に違和感との差が大きい。

 まるで物理的に獣の拳で、殴られたような重さがあった。

《な、なんなんだ! コレ!!!》

 肩を竦めるマキの姿。

 瞼を閉じかけた時にみせた、ドゥの笑みだ。



 パジャマパーティの賢人会に一報。

 時間の流れがさらに緩やかな、地下迷宮アーカイブから閲覧書籍の破損が報告された。

 書庫内の出版物や手記、経典に魔導書などはすべて“特務機関サーヴィター”の至宝である。

 壊れたら修理する前に一度、賢人たちに打診することがルールだ。

 綴られた言葉には力がある。

 魔法使いたちの用いる言葉だから、尚のこと。

「クッコ・ドゥ晩年の手記?! これは何かの悪戯か」


「或いは作為的な何か?!」

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