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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1765/2369

- C 638話 大魔法使いの残滓 18 -

「まさか、視線を交わすだけで術を?!」

 班長が慄いて呟くと、

 皆が一斉に、視線を落としてた。

 狂犬ぶりの男さえ背を向けてたほどだ、が...。

詠唱ことばとは、イメージを安定させて魔法を術者の思い通りに使わせるもの。つまりは、言葉スペルとはそれ自体が強力な魔法のスイッチであるという事!! こんな初歩的なことを、この時代の魔法使いは習わないと? いや、教えてくれるとかじゃないよね、これは身に沁みて感じ、忘れてしまってはいけない事じゃないかな...」

 マキは膝を組み直す。

 わざとらしく遠巻きにある、魔法使いたちにスカートの中が見えるよう。

 視線が上がるのを確認すると――微笑みながらウインク。

 誑かしている。

「視線を交わしあっているからじゃない。キミたちとの会話の中で、古代語を織り交ぜながら聞かせてたんだ。ああ、今から耳を塞いでも遅いよ? 言っとくけど、最初の1行説を耳にしただけで、術は音ではなくなって直に心へ(蠱惑的に微笑みながら)いや、脳幹にぐいぐい捻じ込まれていく――精神の侵略みたいな術式でね...俺の得意とする魔法のひとつさ」

 遠巻きにあった班員が動く。

 輪の外にあったから、班長やその隣人からは死角になってたけど。

 狂犬の男からはよく見えていた。


 仲間が、仲間を裏切るシーンをだ。

 咄嗟には名前が出てこない。

 普段、まったくのモブたちが正気の班員を、背中越しからナイフで刺して歩く。

 瞳孔が開いてるから、精神汚染されているのは間違いない。

「ちょ、おまえら!!!」

 その凶行は、彼にも訪れた。

 三方向からの同時攻撃――「君はさ、腕っぷしがいいと思ったんで特別だ!」マキの顔をした別の何かの挑発。左右のナイフを払い落として、肉体強化で正面からの凶刃は受けることとした。

 筋肉の力で傷口を一時的に委縮させれば、出血も最小限に収まる。

「うんうんやっぱり、俺の嫌いな脳筋な考えだ!!」

 楽しんでた。

 班長やシジにも刺客は向けられたけど、

「詰めが甘い!!!」

 と、返り討ちにされてた。

 いや、それでいい。

 魔法使いは接近戦に滅法弱いのが通説で。

 そんなのに対応できたのは、数百年も前に戦乱の中で場数を踏んでた者たちだけである。

 帝国だって、マーガレットを除けば五指くらいしかいないし。


 ドゥは近接が得意なタイプではない。

 というか、他人で壁を作る下種なタイプ。

「甘いか、見逃されてることにもう少し、感謝と言うのを感じた方がいいよ?」

 縄が切られ、手足が自由になる。

 切り株の椅子から、班員の組体操で出来上がった“玉座”へと座り直してた。

「やっぱり椅子はこの高さがいいね」

 班長達を見下ろすマキの姿。

 冒涜だ。

 いや、これも挑発――怒りに任せて飛び込んでくれば、操り人形たちの餌食に。

 逆に冷静に対応されても、変わる事のない立ち位置といったところ。




 工房の上司がここに来たとしても事態の解決にはならないだろう。

 相手は現代に蘇った、自称“帝国の魔女”に匹敵する大魔法使いである。

「さて、キミたちをどうしよう?」

 これからはドゥのターンだ。

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