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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1762/2367

- C 635話 大魔法使いの残滓 15 -

「旅団長?!」

 技術顧問が去った陣屋にて、意識が飛んでたカイゼル髭に声が掛かる。

 斥候組の何人かが戻って来てた。

 施設から離れた風下で、凧を揚げて観測。

「遺跡ですが、昼夜を問わず魔獣が警戒に当たっています」

 アリの入る隙間なし。

 こんな報告は、ここ数日変わらない。

 ただし、理解しえたことは術式の正体だ。

「召喚術式、か」


「近寄ると、不快な音により正気が保てられなくなるのは、守護する魔物とて同じようで」

 観測用に揚げたドローンによって、魔獣と魔人が同士討ちしているわけだ。

 例えば、部外者であるゾンビや人狼が近寄れば、協力して排除しようと動くのだけども。

 そんな横やりが無ければ、再び共食いが始まる。

「厄介な防衛装置だ」



 ――そうした話は、409魔導大隊だった元隊員のコロネさんから聴取で来ている、ボクたち。

 種族進化トライドの手助けをするだけで、おそらくは非常に貴重な情報が、下種な言い方で纏めてしまうと“タダ”で手に入れている状態。ボクの背後で背中合わせに座り込んだエサちゃんはずっと、肉を喰らってた。

「それ、魔獣のでしょ? 食べて...大丈夫」

 ゾンビと悪魔を喰らう生き物だ。

 悪魔や魔人はまあ、百歩譲ればちょっと人間種ひと寄りの生き物で...

「うん問題ない。考え方を替えれば人食い熊とか、虎なんてのだと思えば」

 そんなに割り切れないよ?

 背中越しに籠る声。

 もぐもぐ、ごきゅんってのも聞こえているけど。

「魔界から殆ど無尽蔵に湧くものだと思うんだけど」

 この一言には少し違和感がある。

 魔物たちの召喚術式だという事は、コロネさんたちから持ち込まれた情報による仮説。

 ()()()()による限定的な、転移門がこじ開けられた――この場合は、魔獣が多く生息しているであろう、獣王の森か。或いは、九領と十領の国境紛争地域ふもうちたいなどが候補に挙げられてるけど。

 確証はない。

 だって、異常すぎるんだ。

「魔獣たちの湧き方が異常」

 ハナ姉も肉を食う。

 ふくよかな「I字」の谷間から、調味料が代わる代わるで顕現し。

 原始肉のようなワイルド・ボーンステーキに振りかけられていく。

 うん、確かに山葵の香りが食欲をそそる。

「焼けば一緒とは、よく言ったものです」

 装甲車の中にあった戦闘糧食レーションでは物足りずに、ウナちゃんも砦の中に潜り込んでた。

 まあ、確かに人外のひとりや、ふたり増えたところで――

 とは言っても、これは魔王とその側近筆頭。

 褌姿で凄み、モデル立ちなんてすれば、ざわめくオーラで低級な魔物たちは昏倒しかねない。

 アロガンス曰く『これは漢の匂いってヤツですよ!!』フェロモンか何かだと間違ってるようだけど。

 それは断じてない。

 お前のは、体臭だ。

「魔獣の湧きが異常とは?」

 目の前がくらくらすると、不調を訴えるコロネ隊長。

 進化先はレッサーヴァンパイア。

 ゾンビからグールへの進化を幾つか飛び越えての飛び級に成功した。

「うん、ボクの術式が功を奏したね!!」

 不死者王ノスフェラトゥの眷属の末席に加わると、外見も()()()()なるが、未だ完ぺきではない。陽光の下では日焼けが火傷みたいになるし、聖水は触るのも呑むのも腹を下すものである。

 また、これが一番大きなことなんだけど。

 治癒魔法や治癒水溶剤、神殿術式の結界系は体調不良になる。

 治癒するんじゃなくて...

 病気になる感じか。


 そうなったら、血を呑むか。

 精気を吸うことだ。

「うーん、未だ、先は長いですね」

 ごもっとも。

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