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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1759/2367

- C 632話 大魔法使いの残滓 12 -

 ナプキンを装着したドゥの動きは奇妙である。

「マキちゃん?」

 恥ずかしい動きだけど、大丈夫って言葉が脇より刺さる。

 脇腹の駄肉を摘ままれながら、

「食べ過ぎはよくないよ」と、説教されるくらいに恥ずかしいことで。

 パンツと肌の間にひとつの壁が設けられた。

 ただそれだけの事で、動きに制限がでるとは思わなかった。

 これが神秘?!

 みたいに彼は思っていた。

「そうだ!!」

 拍手を急に打たれると、条件反射的に壁にひっつく習性があった。

 マキという女性の()()だろう。

 生前のドゥにはそんな不思議な修正は無い。

 とも、すれば――ちょっと同情しそうになる。

「急に怖い!!」


「あら、ごめんなさい」

 シジと名乗った娘は、穏やかに微笑む。

 その笑みは実に柔らかい。

 ドゥだから目線をいつもより高くに歩ける。

 壁にひっついて怖がってる身体に、勇気を灯して顔を上げさせられる。


 ああ、身近にもマキを気遣ってる娘がいるじゃないか。



 工房のガイドゴーレムが静かに間をとる。

 皆が唐突に静けさとなった職場で息を呑んだとこだ――「16分前に司書ゴーレムからのオーダー請求申請が、取り消しの認可を受けました。大魔法術式“蜃気楼世界ミラージュ”は、再び非公開となります」マシンボイスがそう、告げた。

 やや安堵感がある。

 なんでそう思ったかは、皆が不思議がってるとこなんだけど。

 それでもC班も痛いところを探られずに済む。

 オーダーに応えられなかった...では、給料の査定にも響く。

 ま、この場合は。


 今、カリマンタン島で暴走した事故原因の究明が、目下の仕事もくてきなのだ。

 それ以外の仕事は些末なこと。

「賢人会の方々は術式の図面だけは手に入れた筈だ」

 頷くゴーレム。

「あそこから何を導くと思う? いや、俺たちがこうやって雁首並べて図式を見ても、むしろ分からない事の方が多い。この連結式は何に掛かってるんだ? それにこの...目にするだけで不快な音が耳に沁みつきそうな呪文、なんなんだよ...怖えなあ」

 ちょっと目で見るホラー図面。

 それ、精神攻撃力がありますよ。

 ガイドゴーレムが、耳を塞ぐ動作をする。

 耳、無いんだけどね。

「音に出さないでください」


「どうしたの?」

 ゴーレムの隣にいた魔女が彼のボディをさする。

「ああ、気持ちいいですね。その温かみのある手で、もっと下の腰と下腹の辺りもお願いしても?」

 シモっぽい話になる。

 魔女も悪ノリで「いいけど、別料金。手でスルのは金貨1、いや2枚だけど。口、舌なら10枚は頂かないと、オイルカス付のアレはねえ」なんて会話で弾んだ。

 ゴーレムのLEDは黄色く照れたようで。

「これは、失敬」


「その流れ、済んだ?!」

 ゴーレムの不安が解消された。

「その不快音ですが、術式が発動すると活動と同時に発生します。外部から書き足されたもので、おそらくは設計段階には無かったものと思われますね、ハイ!!」

 人で不快なのだから、機械が絡めば不調になる。

 大魔法の性質を知った外部――つまりは、謀神のまさに“はかりごと”だと分かった。

「これが一つの原因です」

 暴走の切っ掛け。

 謀神は不格好なオリジナルを一目見て、理解した。

 だから、その遊びに乗ったわけだが。

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