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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1752/2358

- C 625話 大魔法使いの残滓 5 -

『オーダーの件、確かに。術式“蜃気楼世界ミラージュ”の開示を請求します...拒否されました。今ひとたび、開示の請求を試みます...拒否、拒否、きょ...』

 司書ゴーレムの電子音だけが怖いくらいに木霊する。

 えっと、ジジイとババアどもが昼寝できるだけの時間が空しく流れる。

 それまでは不快な声音だったけど。

 時間が経つと、嘘のように心地よい睡眠誘導音へと変わったものだ。


 じゃあ、ジジ・ババも寝るわってなる。

『...っ、3340985件目の開示請求を試みます...開示請求が承認されました。プロテクトの一つ目の条件、クリアしました。続いて、()()()()()にテストケースと、データの貸し出しを請求します――』

 夢の中でも響く電子音。

 思うところは同じで、

 まだ、続けるのかよ...だった。



 地下迷宮という名の図書館とは別で対になる空間には、魔女の工房と通り名で呼ばれた機関がある。

 特別な地位の特別な魔法使いたちが、昼夜問わずに働いてた。

 ま、外から見れば24時間、寝ずに仕事しているような雰囲気なんだけど。

 内に入れば、ただのローテーション勤務。


 2勤1休の勤務体制。

 そこに4班あって、あぶれた班は2休も臨時出勤もありという。

 好きなことをして、大好きなカネを貰う。

 最強だと思う。

「開示請求の後は、テストケースの仔細説明だと」

 詰め番だったゴーレムからの愚痴。

 その愚痴を聞くのは、工房にて働く長寿な生命体だ。

 横に突き出した槍のように長い耳と、色白な肌。

 昔はとんがり帽子なんて流行に踊らされるように、被ってたもんだけど。

 あれは、作業の邪魔になる。

「あれ、エルフ先輩...帽子は?」

 ゴーレムの目が緑色に。

 ビームが出ると、皆が防御魔法を張る。

「うわ、こわっ!!」


「怖いのはこっちの方だ!!!! 今、いや緑じゃないけど。一瞬、緑に」

 司書ゴーレムたちは異常を表現するとき“緑”になる。

 気を抜くと、射抜かれるっていうか。

 ビームが飛んでくる。

 死ぬような出力じゃないけど、やっぱり当たると痛いんで。

 自然と、目の前にシールドを張るように...

「あいつらと一緒にせんでください。でも、LEDの調子が悪いのかな?」


「言ってる言葉の意味が分からんが、ゴーレムの作成者って?」


「帝国の魔女さまですね。あと、ひとり...あの方の師匠と言った、ゴーレムマイスターが居られましたが。工房の私たちは、魔女さまが御造りになられたんですよ、これ、自慢話です」

 司書のとこは機械音が鼓膜を刺激する。

 対して、工房のゴーレムの声音は優しさがある。

 まあ、よく人の囁き声に間違われて...

 工房が気味が悪いと言われてる原因なんだけども。


 ゴーレムが「?」を浮かべてる。

「で、司書の奴からのオーダーは?」

 ほとほと困った体に肩を竦めて――

「煩いんで開示請求には合意しましたが、どうやら術式“蜃気楼世界ミラージュ”の制作過程が知りたいようです。恐らくは、何が参考に用いられたか...だと思われます」

 工房の仕事は、発掘された旧式の大魔法を、現代でも通用するよう再調整するのが本業。

 平和利用でも軍事用に組み直すわけだ。


 業が深い。


 エルフたちは頭のバンダナを思い思いに締め直す。

「――ったく面倒なことに」

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