表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1745/2359

- C 618話 カリマンタン島戦線 38 -

「アホみたいに選択しないけど。逃げてどうにかなるってことも」

 浜辺からしこたま火炎球が飛んでくる。

 沖にある幽霊船の手前で空しく着弾してて実害はない。

 が、ちとイラっとする。

 ボクのインタビュアを終えた取材陣たちは、魔法の絨毯に飛び乗ってどこかへと消えたけど。

 浜のゾンビはハナ姉のツボに入ったらしい。

 操縦席で嗤い転げてた。

「あいつら届きもしないのに無駄なことを!!」

 ああ、そっちか。

 あの人たちも必死なんだから嗤ってあげない様に。


「徹甲弾装填よーし!!」

 は?

 エサちゃんが砲座に戻ってた。

 散々、ボクの身体にまとわりついてたのに。

「ちょ、何するの」


「うん? 攻撃するにょー」

 引き金引いてて、射撃時の衝撃が装甲車に伝わる。

 操縦席側に身を乗り出したボクは目撃した。

 幽霊船を貫通した砲弾がぐにゃぐにゃ、うねうね錐もみしながら、浜のゾンビに直撃したことを。

 して、件のゾンビよりもそっちのけで嗤ってた、姉さんも目端に涙浮かべて――「エサあー、あんた船長に怒られてきてよ~」だって。

 いや、これ連帯責任になるって。

「あちゃあ」

 気が抜けるこえを上げたのは、下手人のエサちゃんである。



 幽霊船ガレオンに穴を確認しに来た船長は、目が点になる。

 幽霊船に物理攻撃は通用しないってのは、幽霊にバールで殴りかかっても、スカるだけで当たらないという意味で。幽霊を攻撃するならば、先ず手順という者が必要だ。

 それら手順そっちのけで法則も曲げられたのだから、驚いているのだ。

「おいおいおい...」

 穴のから覗くと、砲座からエサちゃんが無邪気に手を振ってた。

 彼女曰く『邪魔だったんで撃った』だ。

「おいおいおい...」

 穴側から振り返ると、対岸の砲門から抜け出して浜へ。

 誰一人も船員が巻き込まれていない珍事。

「ま、穴は塞げばいいが。砲弾に()()刻んでんだよ、あいつら?」



 同時刻の浜辺。

 一掃された魔獣たちの死体に群がるゾンビたち。

 腰に帯刀された小剣で、毛を刈り、突き立てる刃――分厚い皮脂から肉を暴く。ただ今、浜のあちこちで魔獣の解体ショーが見られるそんな状況なんだけど、ひとり必死に海へむかって魔法を放つ馬鹿がいる。

 やや冷静さを獲得したゾンビが彼に近づき。

「いい加減にしろ!!」

 と、腰に蹴りを入れて吹き飛ばした。

 最後の詠唱魔法は、直近に着弾して海水をモロに被って、ふたりは激痛で叫んでた。

「何やってんすか?! 隊長に班長も???」

 肉を摂取して、隊員たちもようやく理性が戻る。

 ここ数日は飢えによる狂乱状態。

 動くものすべてに攻撃してた。


 不思議なことにオドが尽きる様子もなく、また、マナに満ち溢れていて調子はいい。

 生理現象の一つ、飢餓うえだけは、なかなか満たされなかったのだ。

「くそー、お前のせいで私まで海の塩を被ったじゃないか!!」

 死んでいることは理解している。

 半死半生の状態であることも理解して、特務機関時代の知識を利用してのゾンビ化に成功した。

 最終目標は、不死者ノスフェラトゥ化へ移行させることだが。

 成功例は無い。

「...隊長っ」

 歩きにくそうな兵士の一人が肉を持参。

 今、焼いて焼却処理した。

 これで塩味でもあれば、まあたぶんそこそこ食えるようになるはずだけど。

 彼らには味覚がだいぶマヒしたものになってて...

 助かってるところもある。

班長こいつが砲撃してたのが、アレだ」

 視力も完全に回復した者は少ないけど、目を細めればなんとか見える。

 ああ、あの沖の~って声が漏れれば十分だ。

 隊長だって完全に見えてるわけじゃない。

「先ずは、彼らの話を聞かなくてはならん!!! それから攻撃しても、我らは死者だからな」

 時間の有無の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ