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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1738/2362

- C 611話 カリマンタン島戦線 31 -

 幽霊船から砲撃がはじまる。

 砲撃の目標は、エサ子が曳光弾を投射した地点に絞られて。

 点攻撃ではなく、面の制圧攻撃が行われた。


 洋上に浮かぶ帆がボロボロ、船体も藻やフジツボに侵食され、傷んでいるように見える10隻の船。

 その帆船から斉射される砲撃の威力は、冷やかしの嗤いをあっさりと看破する。

 魔法で戦ってるゾンビも容赦なく吹き飛ばしたけど...


 死んでるから、大丈夫だよね。


「...曳光弾か」

 エサちゃんに踏まれながら、

 いや、時々頭も踏まれる。

 彼女からは「ごめん」って悪気の無い声音が聞こえはするんだけど。

 なんというか、いや。

 釈然としないっていうかさあ。


 踏みすぎ。

 膝でこつこつって、小突いてくるんだ。

 振り返ろうとしたら顔を踏まれたし。

「ダメ、見上げちゃ!!!!」

 軽く怒られたっぽい。

 小突いてくるのは、催促しているから。

 ほら、給弾室が空になった。

「曳光弾から先に無くなるよ?」

 ボクは頭上に生暖かさと、柔らかさを感じてる。

 目を瞑って感覚を研ぎ澄まし...

「こ~ら! 想像すんなし、マルちゃんは私の手の届かないとこのフォローだけ...して」

 むむ、遂に甘える言葉を身につけた、か。

 いや、そのたどたどしかった初心な甘言の方を聞きたかった。


 ()()()()って、何かと嬉しいもんじゃん?

 エサちゃんよ、キミの()()()()は誰に使ったんだ?!


「ま、この後もこうやって、砲撃する機会が訪れる可能性は無いかもしれないし。今は、船長さんたちの精密砲撃の誘導に使った方が得だと思うんだよね。それに、さあ。無くなったらマルちゃんが補充してくれるんでしょ?」

 甘言を覚えたついでに、どうやったら相手の心が揺れるかも覚えてた。

 かつて、ふたりでじゃれてた様子を“幼女相撲”とか揶揄われるような可愛さがあったもんだけど。


 ボクは口を尖らせて、

 ボクだけが成長していない様に見えるんだろうなあ。

 ちっこいままだし。


 目の前が急に暗くなる――「あ、違った」

 え? な。な、なにが...ちが...あ、磯の香...

「こらこら、詮索しないし考えない、いあ..つ、ついでに嗅がないで!!! は、はず」

 エサちゃんの動揺。

 いや、これもちょっと珍しい。

「ちょ、お・ね・が・い」


「は?」


「えっと、ね。マルちゃんのパンツ、ね...ちょうだい?」

 ん?



 領都内に現れたのは、おそらくはゾンビと化した公国市民と、それを糧とする魔獣たちだ。

 欧州の各地で生じた国境紛争や継承戦争によって、ゾンビやグールの負の遺産が急増し、結果、捕食者も増えたという報告が生々しく記録されている。グラスノザルツは幸いにして、国内紛争と呼べるほどの大規模ではなかった為に、他国ほど深刻なダメージを受けることがなかった。

「幸いか...」

 旅団長のまなこに映るは、城壁を越える魔獣たちだ。

 その殆どは()()()()種族であるという。

「ゾンビはどうしましょうか?!」

 遺跡は領都の行政地区にある。

 陣地からやや北東に1キロメートル先へ、足を延ばせば辿り着けるだろう。

 教会の尖塔から見る限りは、日中の内には近づきたくない雰囲気だ。

「ああ、厄介だ。アレを攻撃して数を減らすと獲物を横取りされたと、魔獣たちの気がこちらに向けられる。301だけならば切り抜けられるが、(一瞥の先は、教会の周囲に陣地を敷いた公国軍だ)彼らだけではひとたまりもないだろう。で、クスリは使い終えただろうか?」

 逆に旅団長が、部下に問う。

「必須の量に達したと確認しております。発動条件トリガーは“襲撃された”で、宜しいのでしょうか? 何分貴重な戦力ですし、こちらが起動させた方が」

 制止させて。

「――突如、背中合わせに戦ってた戦友が化け物になったら、それはそれで恐怖だ。錯乱した兵士ほど今のこの状況にはふさわしくない。確固たる()()で『生き残ってやる』くらいの高揚感にあふれた兵士が欲しい、まあ、それだけだがな」

 士気は高ければ高い方がいい。

 鼓舞スキルを遣えば否応なしに上がるけど、それでも戦力差が縮まるような結果は覆せない。

 そこで301魔導旅団は彼らに一服盛ったのだ。


 さあ、目覚めろ!

 帝国の猟犬ども!!!


 ってな感じで。

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