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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1736/2358

- C 609話 カリマンタン島戦線 29 -

 聖櫃の目的は一貫している。

 人々に新しい秩序を与える事だ。

 が、目下の問題は東洋の後宮から、攫われた“総長”の奪還なわけで。


 元帥府に篭絡された離反者も、頭の痛い問題で。

 カイザーヴィルトで指揮を執る魔術師としては、この城も守り通す使命がある。

総長あれの行方は掴めたか?」

 魔術師の顔に熱いタオルが。

 湯気の出が悪くなると、若い従者がさっと取り替えてた。

 健気だ。

「後宮の奥ってのは分かってますが、後宮府との接点がなく...難航している状況です」

 王国は協力的にみえて、現実は非協力的だ。

 聖櫃は技術提供者と同時に、戦争をもたらした死神か何かみたいに忌避されている。

 総長の誘拐は『何かあれば一蓮托生』という意味でかどわかされたと、捉えてた。

「(あいつはドン臭いからなあ...)拉致られて、三月みつきだ。戦争が終息したら、救出の道が遠のきかねない。元帥府の離反者を煽りつつ、国外に散った工作員たちの尻も叩け!!!」



 着物の監獄から救出された総長かのじょは、肌着のみで湯殿に到着。

「基礎能力を図るべきでした」

 と、戸一枚向こう側から謝罪の声音が届く。

「あ、いえ。えっとご期待に沿えず...ごめんなさい」

 肌着のままでじっと項垂れてた。

 再び、湯殿勤めの侍女たちに気を遣わせてて。

「あ、自分で脱げますから」


「いえ、脱がずにそのまま」

 湯あみで、本格的な湯を楽しむのとは違うと諭された。

「えっと...頭、ごわごわします。身体も、ちょっと汗ばんで」


「ですから、椿油を拭って新しく沁み込ませますし。小さな運動でしたが、その汗もこの湯で流すだけに。濡れた肌着を交換したら、動きやすい着衣に着替えてもらい...女王陛下にお目通り願う予定です」

 細く返答して。

 彼女は侍女たちが抱える桶に黒髪を委ねてた。

 気持ちいか否かと問われたら「微妙」と返すほかない。

 櫛ですかれて、頭皮の油でゴワついてた髪も艶が戻ってきたようで。

「お綺麗なおぐしです」

 ――だって。



 やや変な照れ方をする。

「あ、ちょっと聞いても?」


「はい?」


「なんで...わたし、こんなトコに」

 侍女たちは口を閉ざす。

 知っていても言えない事情があるのかも。

「陛下にお聞きください」

 肩から腕、胸やお腹に湯を当てられた。

 柔らかく熱すぎないお湯だ。


 う~ん、これ眠ってしまいそう。


 眠気に誘われたところで起こされる。

「終わりました」


「えー!!!」


「ささ、肌着と着物のお着替えを」

 催促は続く。



 元帥府の奥には神殿がある。

 外の世界が40度を超える異常な真夏日であろうとも、この神殿は寒いくらいによく冷えていた――最深部には、人魚族の神像が安置されていた。東洋王国の皇位継承権が女性だけに与えられるいわば、歴史のような物語が、この神像を通して奥のレリーフから読み解くことができる。

 胸から上は人のよう。

 腹から下は竜のような像は、女神に一太刀くわえんと十文字槍を天に突き上げていた。


 で、その神像の傍に若い男性が寝かされてた。

 活きのいい半死半生の身体。

「皇族の子たちは脆くて困るよ、私の身体はタフで無くてはならん!!」

 そんな皇族はいませんって声が返る。

 股下を豪快に掻いて、爪の匂いを嗅ぐ――うーん...性病ですね。

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