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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1734/2368

- C 607話 カリマンタン島戦線 27 -

「では、お言葉に甘えて」

 どこかの吸血鬼みたいだけど、他人の家や部屋に招かれないと入れない性格たちのようで。

 声が掛かるまで、扉を半開きにして中を窺ってた。

 書類仕事が一段落したので、声が掛かるまでそわそわ待ってたらしい。

「律儀だねえ。いや、難儀なやつだねえ」

 シルクハットと外套はハンガーラックの方へ。

 いかにも上等そうな光沢ある紳士服に、嫌味の一つも言いたくなった。

 これも国民の血税が注がれていると思うと腹も立つ。


「お、お気付きですか?」

 注意深く見ていただけ。

 紳士服のブランドとか、まあ、その辺はどうでも良かったんだけど。

「これにはシルクが使われてましてね。諜報員としては()()()戦闘服ですので、特殊な魔法触媒なども使われているのです。接近戦における刀傷や銃創などにも効果があ、あり...」

 おや?なんて、声音が。

 自慢げに話してて、諜報員と准将の間に冷ややかな風が流れていった。

「あれれ?」


「服の自慢なら帰れ!」

 ひと仕事終えた准将は、開いたカップに琥珀色の液体を注ぐ。

 甘い香りと独特な焦げた匂い。

「スコッチだ。あちらのエルフから毎年、贈られてくる...君も、嗜むかね?」

 外交武官だった頃の付き合いで。

 小ブリテン島に派遣された頃の古い友人。

 当時、ふたりは若かった。

 ま、エルフなのであちらが年上なのは、間違いない。

「んんんんん、や、灼けますね喉が」

 注がれたグラスの琥珀がとろりと動く。

 指一本分の暈で、ストレートタイプ。

 氷とか、水なんて入れずに飲むスタイルをいふ。


 ま、灼けて当然。

 これは族長オリジナル。

 樽から取り出した未調整の最高濃度。

「で?」

 要件の催促。

「まさか、あのような()()()で大陸からの利権を保持したまま、集結できるとは」

 准将の襟からまたひとつ、ボタンが外される。

 軍服は時に窮屈だ。

「我らも寝耳に水って事もある。ただ、今にして思い返してみると...ああ、なるほどそういう事だったのかと。納得もできるシーンは無くもな...い、いや。陸諜が動いてたんだ、そうでもないか」

 元帥府からのエージェントが首を傾げる。

 准将の目がグラスから僅かに紳士に向けられ、

「戦車の件だ――我が国の工業力に合わせて“白服”らは、技術の提供と量産体制の強化などの支援をすると言った。(紳士から「はい」と反応が返ってくる)だが、それ以前から陸軍では欧州の()()()()()なる軽戦車の開発に着手していてな。おおよそ、平均値に至っていたというのだ」

 白服の手を借りずとも、数年内には生産してたかもしれない。

 ただ、その時間が前倒しされた。



 元帥府の寝室――

 窓の縁に性病に悩む元帥と、今宵のお供に用意された青年が転がってる。

「遊ぶために、若い将校をつまみ食いするのはご勘弁願います」

 妙齢なる女性将校が入室。

 直後にベッドで伸びてる青年に一瞥してた。

「お前たち長老衆が、艶町いろまちから男娼さかなを釣り上げても良いと言うのならば、そうだな。今の行為をやめても良い! 今しばらくすれば、この肉棒も...腐り落ちて使い物にならなくなる」

 こめかみを押さえ、

「このような自堕落な遊びを控えればその身体、腐る事も無かった...それだけの話ではありませんか?」


「嫌な女だな?」

 深く息を吸って、細く吐く。

 長老と呼ばれた女性将校は項垂れた。

「よく言われます」

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