- C 603話 カリマンタン島戦線 23 -
ボクは装甲車内にある厨房に立ってた。
船長たちは言ってた――「この“塩飴”でも回復に繋がりますな」と。
ならば、支援魔法で携われないのならば。
ここは“調理”という手段で携わつほかない。
マルちゃん印の“塩飴”はボクが監修している商品のひとつ。
普段は、工場から出荷されるんだけど。
ま、ここは料理もできる子としてのマルちゃんを見てもらおう!!
「...そんなことしなくても、マルが女の子だってことは揺らがないぞ?」
出来立ての水飴を舐める姉が。
「もう、ハナ姉ったら」
水飴とハナ姉を引き剥がした。
これから冷やして...
「うん、しょっぱい」
「本当は塩水ではなく、海の方がいいんだけど。舐めるだけで体力が回復するなら...ね」
そう。
仲の良くなったカリフラワーみたいな船長曰く。
長い指を起用に動かして――「我らは南極海から派遣されているから、船の修繕や、肉体の疲労、体力に怪我なども“南極海”の海水があれば...たちどころに消えるんだけどね。まあ、この塩飴で似た効果が少なからずあるというのは、ね」
保存食ともに重宝はしてくれてるけど。
飛びつきたくなるほどの歓迎っぷりではない。
癒せるけど。
癒しきれない...みたいな差だ。
「――で、このしょっぱさか」
ハナ姉の目が細くなる。
「なんか胸にズキッときた」
ボクのショックを敏感に感じ取る。
いやあ、この姉の触角はマジ、すごいと思うわ。
「私の個人的な感想だけどね」
「うん」
「マルの塩飴は美味しい。だが、海の水はもっと甘い!!」
衝撃的な――。
◇
ペンギン郵便の速達により、南極海の水が取り寄せで来た。
2時間ほど待たされたけど。
送ってくれたのは、幽霊船の修理に従事しているサザエ頭の大工さん。
ウナちゃんの知り合いらしく。
代わりに隠し撮りした“宇名部長”を送付した。
「ハナ姉、どこで?!」
「え? 写真。...企業秘密と言いたいけど、今度、就職するんで職場見学でいろいろ」
驚いた。
あの引き篭もりが?!
「心外な眼差しだが、ここ最近の心境の変化だ。私が働いて、義妹と一緒に住むために頑張るのさ!! 一恵さんにも話は通してある」
ま、マジ...
一恵は、ボクのママで。
いつ、いや、どこ。
いやいや、あの家を飛び出して何処かへ消えた、ママンにどこで報告を?!
「地球の裏側とかまあ、意味わかんないけど本人から連絡があって...娘の近況報告とか、ね」
あ、はい。
確かに意味不明だ。
「じゃ、この海水の分析から」
魔法で複製が出来るか試作する。
実験に参加してくれる被験者を募り、陽が上る2時間前に“ブツ”が完成した。
水死体の皆さんの肌艶が瑞々しく戻っていること、それをもって本作戦...いや、本プロジェクトは完成した。
「これぞマル印の“潮グミ”!!」
かつて何処かの世界線にて、スライムをしゃぶってるみたいと不評だったグミ。
触感は程よい弾力と、ざらつき。
風味は磯の香りを残しつつ、甘しょっぱい感じで手製さがある。
「んー、美味」
ハナ姉以外にも、エサちゃんやウナちゃんも食してる。
「疲れた時には最高だな!!」
アロガンスさんも、だ。
ボクなりにもこれは自信作だ。
ま、なんかどこかで作った事があるような、既視感はあるんだけど。
「スライムになったマルを舐めた時のような舌ざわり」
ん?