- C 601話 カリマンタン島戦線 21 -
調査の結果。
陸地ではいくつかのゾンビ抗争が起きてた。
これは、戦闘の記録のリピート現象だと考えられる。
北カリマンタン島では大きな戦闘行為があって、大魔法の装置がそれを記録した。
利用された大魔法は未知の技術か、或いは局所的な特異点として存在し、この記録を際限なく現界させることにより死の島となった後も、死者は死者として眠ることが出来ずに戦っているというのだ。
記録は、人々の強い感情だけを切り取っているとも観測された。
「...すると大魔法の暴走はまだ続いてる、とか?」
そんな遺跡は、ブライトの周辺には見当たらなかった。
「効果が限定的のようだから、ブライトがギリギリの範囲と考えていい。そこよりも後ろに下がると、記録映像が止まるような現象も見れた。原理などはとんと分からないが、立体の偶像に対して彼らと同じ尺から見るか、或いは離れて観察するかのような違いにもとれるな」
観測者は、頭がシイタケみたいな船長である。
シイタケ頭は、かつて大賢者と呼ばれてた魔法使いだというのもこの時に判明する。
他の船長たちも同僚がそんな肩書を持ってるとは、夢にも思わず。
「なんか、さ。ため口で...悪かったな」
とか。
「いやあ、俺はてっきりBBQの呪いかと思ってたわ」
なんて反応で。
言い出したシイタケの気恥ずかしさなんて気が付きもせず。
皆が思い思いに謝罪していく。
「シイタケ、どんまい!」
ウナちゃんが一番、余計な一言だと思う。
◇
「で、気を取り直して」
仮想現実の中の拡張現実めいた仕組みだとして。
ゾンビに攻撃されたらどうなるのか。
この実験に対して果敢に挑んでくれた勇者たちを紹介しよう。
3名いる、そして今瀕死の重傷であるとも告げる。
そう、攻撃されたら死ぬほど痛いのだ。
「ダメじゃん!!」
「そう、ダメなんだよ。攻撃されたら傷の治りが悪い。ポーションの治癒効果を“カース”めいた付与攻撃にあっていて治癒能力が疎外される。じゃ、ボクの神殿を降ろそうとも考えたら...」
船長たちからの必死な抗議を貰ったとこだ。
そう、彼らはアンデッドである。
治癒効果が効かないのではない。
「それ不死者だから、逆に苦しめてる?!」
「エサちゃん、正解! アメちゃんあげる」
やったーって声が響く。
装甲車の後部ハッチを全開放し、天幕の帆布と連結した簡易指揮所の中で。
ボク秘蔵の“塩飴”を配って歩く。
「不死者の人たちって結局、何で復活できるの?!」
魔物の王たるウナちゃんが問う。
死神代行である船長たちの落胆は大きかった。
それは、さ。
ボクから質問した方が良かったんじゃ?
「魔王であるあなたから、そんな初歩的な質問されると...なんていうか魔界って、大丈夫なのかなって思うんですけど、マジで聞いてます?」
タコ頭のしかめっ面。
こう、くしゃくしゃにしてる感じで。
「うちらは水死体なんで海に戻してやるのが一番ですが。このお嬢ちゃんが配ってくれた“塩飴”でも効果はあるようですな」
飛び交う銃弾にさらされてついた服の綻びが回復していく。
ほう、服も装備品なんだ!!
「ええ。死んだときに魂の中に記録されるようですから。ま、概念を抜きに考えると、魂の一部なのでこれもって含めると今、俺たちは素っ裸ってな考えもできますかね」
あくまでも魂として見た場合の話。
「じゃ、攻撃してくる死体、いや。記録の方は?」
そこが悩みどころだ。
攻撃は通る。
消失した兵の再起動までには時間があるともいう事も分かった。
が、不死者なので内陸部へと移動すると、全方位から湧いてくるという仕組みで。
「要するに」
「要するにキリがない、だ」
賢者シイタケが立ち上がった。
それ、なんか意味ある?