- C 593話 カリマンタン島戦線 13 -
チャーター船“リエーティ”号に雑音の多い無線電信が入る。
「ようやく捉えたぞ、このごく潰しどもが!!!」
無線が切れた。
いや、切ったというべきか。
「義姉さま、律儀に聞いてやる必要はないでしょう」
義妹の銀髪の少女の目くばせで、青銀髪の少女がスイッチをOFFにした。
「いやいや、スイッチはやり過ぎ。もとに戻して」
ラミアに促されて、少女はONにする。
「...っ、煩くランプが光ってるけども、リリィの言い分は最もだ。律儀に付き合ってやる必要はない...が、こっちも軍人である以上は、上官に花を持たせにゃあならない。彼らは誰かに怒鳴っていないと、自分たちの地位の再確認が出来ない生き物なんだ。ここは怒られてあげようじゃないか」
スピーカーフォンに切り替える。
怒りに任せた怒声がスピーカーを通して音割れしてた。
まあ、要約すると。
“この惨状はキサマらのせいか!!!”
って身に覚えのないことが紐づけられてた。
「やっぱり切りましょう」
どうどう。
じつに豊かないや、美しい形の胸が上下に揺れた。
青銀髪の少女が、銀髪の少女の身体を制止させて宥めさせてる。
その際に身体が上下に動いたのだけど。
ラミアは自身のと値踏みでもするように両手を胸に当てる。
「同じものを喰って、同じように捻って、似たことして...そんで。いや、なんだその肉は!! そんなの不公平じゃないか」
「何に怒りを顕わにしているので?」
義妹の冷めた視線が刺さる。
あ、う。
「――う、ほん。あ~、あ~聞こえてますか~」
義妹の視線は三白眼となって、義姉を獲物でも見るかのような肉食獣と化している。
青銀髪の少女はずっと彼女の身体に触れながら制止を促してた。
は、建前で。
このままずっと...な下心があった。
◇
輪形陣を組んだ、中欧連合王侯軍艦隊。
総兵力約5万以上もの人員が参加している、この海域では最大の暴力装置が西カリマンタン島沖合に停泊中である。というか、事態が飲み込めずにあるのも重なってるんだけど、とにかく彼らの中で情報収集してきても分析が出来ないのが現実問題としてあるようなのだ。
シュリーフェンのようなウイッチキャリアは、2隻――魔法少女・少年らが1000人ちかく乗艦している大型艦という規模でのことで、観測用ユニットの換装を行い。通信の不安定解消のために、有線電話を提げて飛び立たせたまでは良かった。
臨時の黒電話の呼び鈴が鳴る。
「こちら観測ベータ隊です」
北方の島へ向かわせた組だ。
直掩の水上戦闘器3人と、偵察器の2人、通信器1人で小隊を組ませてた。
この人員構成で、4時間起きに東西南北のそれぞれへ有線が届く範囲まで飛ばす。
障害の具合は時間が経てば解消すると、短絡的に考えてたんだけども。
これが一向に改善しなかった。
そこで艦隊も小型の水上器母艦(5000トン未満の輸送艦から改装した)と駆逐艦の捜索部隊を方々に放つ――404エラーズの捜索の為である。なぜか、直近でしかも直接“島”の大魔法を使用して、東洋艦隊に艦隊決戦させるよう下知を下したからだ。
「――で、私らが何かしでかしたと? ...ま、そういう事ですか」
「かいつまんで要約すると、そういう事になる。
“リエーティ”号に乗り込んできた魔法士と、腰に短剣、胸元に銀の皿のようなプレートを提げた将校が、肩の埃を払いながら告げた。
404が置かれている立場のようなものを、だ。
「はあ。...ええ、理解はできますけど。もう少し自分たちの頭で考えてみてください」
ラミアのは挑発にも聞こえた。
が、同時に落胆にも。
「ここまで危険を冒して飛んできた、我々には茶のひとつはくれてもいいものだぞ?」
弁護の用意はあるとか。