- C 587話 カリマンタン島戦線 7 -
“コウテイ・マンタ”の下部には光学式の超望遠レンズが8個ある。
普段は、専用のフィルターとキャップによって封印されていて。
レンズ本体に、傷がつかないよう管理されていた。
このレンズは非常にデリケートなつくりをしている。
使用の有無に関わらず、念入りに掃除されても耐用年数は4年半だ。
傷が付けば一発交換だし。
たとえ埃の一つでもレンズ表面にあれば、撮影能力が落ちるとさえ言われた。
神経を注いでも、その寿命はきっかり4年半だと言われている。
これはボクのせいじゃないんだけどね。
超高高空で飛行するんだという想定に至った時、これの管理責任者が空軍にあるようで。
天領の空軍さまたちは“観測隊”という情報分析チームをまるまるひとつ、ねじ込んできた。
これが機体下部に仕込まれた“カメラ”の出所だ。
ま、結局のところ。
ボクの手を離れている代物でもある――ブラックボックスも見せてはくれない。メンテナンスで、マイスターであるボクの手を借りないってのも、癇に障るものだけど。
レンズの交換はそこそこ大きなドックに寄る必要がある。
「これ使ったらさあ」
ウナちゃんが、ぽつりとつぶやく。
「今度、交換するときさあ。どうやって行うの?!」
どこからともなく「あー」って声が漏れた。
ブリッジの中に詰めてたオペレターの誰かだとは思うけど。
皆が一斉に顔を突き合わせて、
そして、明後日をむく。
ほら、そこまで考えてなかったよ。
◇
8つのカメラがまるで蜘蛛の複眼のようにきょろきょろと。
海上のあちこちを睨んでる。
恐らく誘導は、眼下の艦隊からさほど遠くないところからであるに違いない。
四領が使用した特殊弾頭でも、マナの濃い世界で敷設された“魔法城壁”の重ね掛けを見事に突き破ったものだ。近くに居ればその衝撃に巻き込まれて揉みくちゃにされるだろうから。
「きっと海だー!!」
ってウナちゃんが叫び、
スリッパですぱーんと叩かれた。
殴ったのはキルダ嬢である。
同じようにスリッパを握ってた“巨乳姫”はその手を懐へと仕舞いこむ。
ここだと思ったんだろう。
上司を殴るなんて、そうそうあるもんじゃない。
いや、殴っていいという話でもない。
「いたーい!!」
「海は当たり前だってのー」
そっかーで口を尖らせた。
彼女の中ではそれが最良のものだったようで。
オペレーターたちは呆れてる。
「あれ、ウサギちゃんは?」
艦長の姿が見えない。
ああ~って声が漏れた。
みんな忘れたっぽい。
そのころ、シーラビット族のウサギ艦長は自室で寝込んでた。
流行り病の“風邪”らしい。
座りっぱなしの生活に、不規則な人参摂取。
この生活環境により...
彼女は風邪を引いた。
「むね~ん~」
だ、そうな。