- C 586話 カリマンタン島戦線 6 -
「マジか? お高く留まり過ぎてない」
素直に表情を歪ませていた。
こういうやり取りが好みでは無いらしい。
股下を搔いた爪を嗅ぐ。
ん?
もしや...性病?
「太皇太后に遭いたかったなあ~」
突如にへそも曲げた。
全くの子供である。
「じゃあさ、」
奔目で海軍省の小物たちを捕らえた。
ロックオンされたと言い換えてもいい。
「この将校たちとなら一緒でもいいよね!!」
それ、どういう理論で?
たぶん、何も考えてない。
◆
最大高度で航行している“エイ”型飛行ゴーレムの存在は、忘れられていないだろうか。
この世界でもおそらくは、見慣れてるであろう“怪鳥ゴーレム”にて、地上の新鮮な食物を仕入れて待つ、だけのことがまさか悠久のように感じられようとは...夢にも思わなかった。
魔王ウナのダレようは形容しがたい。
いや、少女剣士キルダも「このカレーは飽きたのだー!!!」って料理長を困らせてた。
ひと舐めしたスプーンが床を跳ねていく。
そんな何時もの喉かな風景。
ここに水を差すような事件が勃発した――警報に赤色灯が灯る。
「な、なに!!」
ブリッジに一番乗りしたのは、ウナちゃんだ。
「高熱源反応です。高次元の魔術展開式の確認も取れました...およそ間違いなく、四領が天領艦隊を壊滅させた“精密重爆攻撃”であると思われます」
その弾頭は特殊。
弾頭には対魔法障壁の相殺術式と重力操作魔法の類が仕込まれている。
摩擦で砕けると、真の恐怖。
弾核が露出、重力魔法により加速した弾芯は、すべてを貫いて衝撃だけで壊滅させる。
範囲攻撃としては熱量で周囲を溶かすのとはちょっと物足りないだろうけども。
こちらに防御不可能な攻撃があるのだと、思い知らせるのであれば十分だ。
次弾の時は逃げる外ない。
迎撃?
考えるだけ無駄かも知れないけどね。
「どこから?!」
超高高空にある“エイ”型の更に上空から落下してきている代物だ。
打ち上げた地点が分かる筈がない。
オペレーターが首を振る。
「痕跡が見当たりません。我々よりもさらに超々高空からとも考えられますし、星の裏側からの可能性もあります。魔術の痕跡が残るこの世界でも、魔術による誘導が出来るのであれば視認範囲なんて意味がありません」
その通りだ。
レーザー誘導めいた事さえしていれば、まず確実に当たる。
「じゃあ、誘導している者を追えば?!」
閃きは怖い。
観測士も同じことに偶然気が付いた。
すでに落下シークエンスに入ってる飛翔体――“コウテイ・マンタ”級飛行ゴーレムが狙われている確証はない。ただ、近くを通過するだけって事だけど、何もしないというのは軍人として。
いや、これはあれだ。
近くを通過してくれたおかげで、計器類に異常が出るとも限らない。
そんな...危惧についてのリカバリー。
そういう事で。
「誰に弁明してるんですか?」
ウナの独り言に、キルダ・オリジナルが問う。
「いや、その...ああええっと」
「分かってますよ。下にマルさんたちがいるかも知れないと考えたら怖いのでしょう?! まあ、ここは海の上。...っ彼女たちが大陸から島々を巡ってる可能性はとても低いです――モニタリングもしてますからね、それでも何かしたいというのは理解できます」