- C 582話 カリマンタン島戦線 2 -
大魔法の効果は凄まじかった。
カリマンタン島の東に停泊してた、東洋艦隊が自死に走ったのである。
404らの上級部隊からは『敵艦隊は艦隊決戦で仕留められるようにせよ』との密命であった。
が、上陸した港町で“使い魔”と遭遇する。
「ラミアちゃんは、未だ、おっぱいが大きくならないね? どったの、発育不足。揉み足らないのかな~」
馴れ馴れしい物言い。
ラミアもぴーんとくる。
「お久しぶりです、ぴんく☆ぱんさーの“総長”どの」
銀髪の少女が畏れ知らずにも、目の前の“使い魔”に話しかけた。
まあ、物理的な攻撃であれば、迎撃体制の青銀髪の少女も控えてた。
「いやいや、妹ちゃんも居たか。これは失敬...」
見えていないわけではない。
悪魔の種類としても、蝙蝠の翼が生えたネズミであるのだし。
ちゅーって鳴かしてみたいとは、衝動的に感じる。
「なんか善からぬこと考えた?」
皆が首を振る。
「あ、みんなが思ったのか...ネズミ、可愛くなかった? そっか。次はネコにでもするわ...いや、挨拶しに来たわけじゃなかった。ここから本題! えっと、何事もなかったとして。踵を返して帰ってくれると有難い!!! っ、本当に有難いんだけど~」
ネズミの制止を振り切る蛇女。
ラミアの周りを飛び回る事しかできないんだけど、これが実に鬱陶しい。
「な、なんなん!!!?」
「だから、行くなし。帰れや!!」
大人げない応酬だと思うだろう。
ああ、銀髪の少女も、白髪の子も茶髪、赤毛の子もみんな首を傾げる。
このふたり、仲良しだなあっと。
◇
まだ港町から出られない404がある。
船も港から離れてない。
「だから聞けや!!」
ネズミが叫ぶ。
叫んでるのは使い魔を通している“総長”と呼ばれる女性だ。
「聞いてやるから理由を言え!」
「...っ、もうあかん。いうで~」
確認を採ったのは、部屋のなかに彼女だけじゃない事を示唆してる。
ラミアはそう判断した。
「ああ、ええとな。あの装置は“あたしら”が使わせてもらった。キミらも409から、こっちがパスをつないだことは知ってると思うけど? アレな続きがあってん。そのまま管理権限の移譲ってさせてもろうてなあ...あたしら使わせてもらったんよ。使い過ぎちゃうけど...壊れちゃって」
彼女が余計なことまで言ったらしく、使い魔が混乱し始めてる。
交信元の方で取っ組み合いが始まってるっぽい。
「まあ、謀神のいう事が正しいかどうか、確かめたい人!!!」
挙手制になった。
皆が押し黙ってる――銀髪の少女も「夕日がきれいだなあ」とか惚け始めた。
「じゃ、縁がなかったと。そういう事でいいひと~!」
全員の挙手を確認。
ラミアは“使い魔”に背を向けて帰還することとした。
マジで帰還した。