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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1620/2518

- C 495話 広州攻防戦 4 -

 かつて隠者と呼ばれた女性魔法使いがあった。

 ユニークスキル“魔法大辞典エクストラ・ブック”を引っ提げてた女性だ。

 ま、腐れ縁というか。


 エサちゃんとはまた違った形で、ボクの知り合い。

 彼女の逸話は...

 何から話そうか。

 そう、生理的に受け付けないって一言が流行ったことがある――初対面のしかも、紳士的に飲み物を奢ってくれたプレイヤーさんに、だ。彼女は例の魔法の言葉を贈った...『わたし、あなたのことが生理的にムリ』と。

 その場にボクもいた。

 あれは何ハラって言うんだろうなあ。


 仲裁に入ったGMごと“煉獄炎ヘルファイア”で焼き払ってた。

 アカウント凍結一か月のペナルティを貰ったが。

 GMともどもとばっちりのプレイヤーさんは、デスペナを貰ってた。


 と、まあ。

 隠者の彼女は、問題児だった。

 リアルも、まあ、親戚とはいえ...やりたい放題だったなあ。



 スキル“魔法大辞典エクストラ・ブック”の特殊性は、きわめてチートである。

 収録可能条件は、()()魔法のみとされる。

 魔法の講義はちゃんと出てたかい?

 ご本家のチュートリアルでも触れていたと思うけど。

 ハイファンタジー・オンラインのゲームシステムは、至極単純だ!!

 スキル制で、レベル制じゃないってこと。

 職業に縛られることなく、自由にスキルを選択できる。


 ただし、スキルが習得できる数には上限がある。

 ま、そりゃそうだわ。

 無尽蔵に持てたら、誰もが無双できてしまうし、せっかくのスキル制の醍醐味が消える。

 スキルで個性を出そうっていうのにね。


 さて、魔法には属性がある。

 好きな属性を取捨選択できるけど――火属性を選択すると、対消滅の関係にある属性は基本的に取得が出来なくなる。か、無理やりとると“不成立”ってアナウンスされて魔法の行使が出来なくなってた。

 ただし...ここで制約と条件が厳しいけど抜け道が用意されてた。

 それが、魔法大辞典というユニークスキル。


 取得するのは“隠者”という職業である。

 メリットは全属性魔法を習得し行使できる権利。

 デメリットは、スキルの熟練度レベルが結果的に上がらないという事だ。

 理由は簡単。

 これは借り物だという認識だから。

 そんな使いにくいスキルで、彼女はボクと互角の勝負をしたんだ。

 魔力切れでふたりがぶっ倒れるまで、その醜い戦いは続いた。




 そんな隠者が、バルカシュの地下駅に降り立った。

 この世界でも“魔法大辞典”は健在のようだ。

 まるでトランクのひとつでも、抱えるように胸元にある

「お招きありがとうございます、将軍閣下」

 縦巻きロールのドリル髪。

 涼しげな微笑みと、白磁のような透き通った肌は印象深い。

 ああ、こいつ。

 肉体だけはエルフに代えてきやがった。

「賢者どのは、欧州戦線を鎮められたと聞き及びましたので、北天の救援にお呼びしたかったのです」

 まあ、正直な方――とか、背中が痒くなるような声でなく。

 こちらでは“隠者”ではなく“賢者”で通している様子。

 世捨て人めいたロールが好きだなあ。

「でしたら、大船に乗ったつもりで」

 フラグを立てても、

 彼女はそのフラグごと焼き尽くせるだけの胆力がある。

 悔しいけど、性能で言えばハナ姉と同類なんだよなあ。

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