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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1616/2519

- C 491話 陽炎の帝国 10 -

「確実に占領下に置いた“青島”と“徐州”、“荊州”の海岸線に“後燕”を興し大陸から軍を退かせる案を出す!!」

 新型の戦車は、そのための歩兵力不足から脱するためのものだ。

 主砲口径76ミリ。

 砲身長3メートル20センチメートル(42口径)ほどの火砲を搭載した、陸軍の歩兵支援車両だ。

 撤退を前提に置いた場合、この新型の生産量もさほど多くは無いだろう。

 が――

「兵の数を補完するために新型車両ですか」

 海軍相は小刻みに頷きながら、

「ならばその復員兵...南方作戦こちらに回してみませんか?」

 話を聞いてない人だった。

「まてまてまてまてまてまて...」


「なんです?」


「俺の話を聞いてたか、軍大学の同期生という仲だから打ち上げたが、だ。帰還兵には十分な休息が必要なんだ。それにこれ以上、戦線を拡大するな!! マナ鉱石や旧文明の遺物が、必ず手に入るとは限るまい?! 会計局の例の女史というのは...そうした希少鉱石ものがあると海軍おまえらを口説いたのだろうが...」

 深く鼻息を吐いて前髪をかき上げた。

 ま、かき上げるほどの長さでもないんだけど、

「考えてもみろ、大陸への進出も結局のところ、我が国の()()とは何だったのかだ」

 増えすぎた人口の捌け口としては、大いに役に立った。

 後に“後燕”国として建国された他国資本の傀儡国家へ、東洋市民が流入するまで約2年。

 インフラ整備された“荊州・上海”は、かつての“斉・台州”にとって代わる不夜都市になるだろう。

「はて、メリットはありませんか?」

 息を吞みながら考える。

 “後燕”国の枠組みは陸軍の所管で実行されていた――策定されるよりもずっと前から、都市の整備、街道、架橋整に鉄道から港湾施設に至るまで近代化されてた。国に計上するまでは陸軍のポケットマネーで行われてる。

 ま、これはその先で膠着している最前線に、必要物資がスムーズに輸送されるよう取り計らってるためで、都市計画のそれではないからだ。が、軍属以外の人々...市民との連携は必要だから、脱出できなかった元“斉”国民にも参加してもらっているというわけだ。

「今のところはデメリットばかりだが?」


「はあ、そういうものですか...とはいえ、同情は致しかねます。まあ、こちらも...正直に言えば陸戦隊をすべて出し切ってしまった状態なのです」

 海軍大臣から衝撃の言葉が吐き出された。

 精悍な顔立ちで、50歳になってもそのイケメンっぷりは、婦人方を惹きつけてやまない。

 その同期の口から。

「どこで、だ!!」


「スールー・セレベス多島海攻防戦において、西欧諸侯連合軍と対峙して膠着したトコでですかね」

 西欧諸侯連合。

 エイセルとデプセンの両国を統合して、新たに“フリースランド”王国が興されてた。

 その国が中心に各小国・諸侯を纏め上げている状態。

 参加国家は大小で30ちかい。

「な、なるほど...その多島海は、もう一匹の獅子が支配すると?」

 背もたれに身体を預け、

 瞼を閉じて天井を仰ぐ。

 熊のような風貌で大柄な陸軍大臣は、

「余計なことを」


「では!」


「ダメだ、これこそ閣議決定が必要だ。ま、国内外にも撤退と転戦ではの二択を迫られたならば、後者の方が良い...なんていう風潮になるだろうが。それでも、今は即決などは出来ぬ。出来ぬから、だ!!!」

 海軍大臣の方へ前のめりにズィっと。

「これ以上、厄介な荒事を持ち掛けるな!!!」


「な、なにか?」


「っ、ハルマヘラ群島のことだ!!! あそこの南欧諸侯が植民地に手を出そうとしていると、小耳にはさんでいる。あっちこっちで戦線を広げるな...戦功稼ぎの傭兵たちが旧台州で大騒ぎだと言うではないか」

 ああって声が漏れてた。

 確かにそんな話()あるけど。

 “フリースランド”に喧嘩を売っている他所で走る作戦案は、海軍相かれの下で破り捨てている。

「分かった、分かった...頼むよ、キー坊」


「そんな幼名で呼ぶな、バカもの!!!」

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