- C 490話 陽炎の帝国 9 -
「我が陸軍兵器開発局が推す戦車は、まさに陸の王者たる風貌を持つに至ったのであります!!」
プレゼン中――。
青島城塞を起点にした大陸の東西、南北へと攻略するなか...
当初こそは破竹の勢いがあった。
が、ここに来て戦線の一部で膠着状態になった――理由は簡単だ、海軍のせいである。
例の南方作戦案。
最初の試案では、海軍の陸戦隊だけでも各地の拠点を落とすくらいの事は朝飯前だと豪語していた時期があった。が、戦地での悪条件が重なって遅々として進まなくなったというわけだ。
そうなると、海軍は国内で遊んでいる陸軍予備隊に白羽の矢を立てた。
べつに遊ばせてはいない。
本国の防衛任務がそもそもの理由。
陸軍総兵力の2割が本土防衛に就いてた。
しかも過酷な訓練カリキュラムをこなせる精鋭部隊のみが、特別に選抜されて残されてあるのだ。
有事があった場合では、寡兵でも朝廷の玉体を守護できるようにと、いうための物だ。
陸地が少ないのに陸軍があるのはそのためだった。
◇
南方作戦の遅滞はひとえに会計局の甘さからだ。
いや、作戦に耐えうる陸戦隊の練度不足というのも上げられる。
海戦ゲームであるから、ストラテジーゲームのようにプレイヤーが、上陸部隊を指揮して自らも揚陸されるとは思ってもいないし、参加するものは少ない。
しかもそんなシステムでもなかった。
そうなると、航空兵力で十二分に地表を叩き、制空権と制海権の掌握に尽力する。
いわゆる色のついた、パネルゲーを交互に塗り替えていき、時間制限いっぱいに多くのパネルを自分に塗り切ったならば勝敗がつくという、単純なゲームに人が流れるのは自明だった。
しかも、勝負が決まった側には戦功の総取りが行われるという。
うん。
戦功オッズは負けそうになると、高く針が触れるので...
ここら辺はプレイヤー間で談合があった可能性がある。
「――ピーチク、パーチク囀りよって!! やかましいわ、我ら本国の師団に今一度何を言ったか、考え直してみろ!!!! その言葉がいかに不敬であるか...身をもって知るがよい」
人差し指を副官に向け、
内閣改造後に陸相となった大臣の血の気の多さは、前任者のそれをも上まってた。
副官が差し出すは、軍刀である。
「まてまて、...っ」
「なんだ、その舌打ちは!!」
「...だから、国土防衛の任に当たる精兵の、そう! 一部でいいのだよ。橋頭保である、スールー・セレベス多島海近海の群島支配には、だ。陸軍の特殊作戦部隊が必要不可欠だと」
明らかに褒めちぎっている。
が...
「そんな猫なで声にこちらが反応するわけが無かろうが!! 大陸でも膠着の兆しがある。これ以上内陸部へと補給線が伸びるようになると、鉄道や幹線道路の整備にも軍の施設・工兵部隊が最前線から外れることになる...」
つまり、敷設する簡易架橋などや陣地の設営などに、大きな支障が出るという。
“斉”公国の西、蘇王国との国境付近には長大な防御陣地があると噂されていた。
それらには信ぴょう性がある。
証左、橋が悉く落とされてた。
これは、明らかに時間稼ぎである――戦車、装甲車、兵員輸送などの機械化部隊がすでにひと月も、足止めを食らってた。正面切って戦えないのならば、という苦肉の策であることは分かる。
「ならば、そうなされば良い!!」
「それが出来る余裕のある兵の打ち出の小づちがあれば何ら、問題はない!! ...問題はない。が、現実、それこそ叶わない悩みである」
御前会議でなくてよかった。
陸軍省へ足を運んできた海軍大臣と、会計局長の...直談判であった。
が、直談判だと聞かされてた側からすると、いささか不思議な感覚がある――こいつら態度がデカいなあ――ってとこだろうか。




