- C 489話 陽炎の帝国 8 -
ボクたち一行は、ハイフォン王国へ降り立つ。
8輪式多目的ゴーレム装甲車の試運転も兼ねてる。
こいつはちょっと思ってたほど大きかった。
折りたたんだ脚での移動になると、多脚戦車にも近くなる。
武装は後部に配置した回転砲座に、75ミリ対戦車砲を装備。
エサちゃん希望の武装だった。
「こんな危ないヤツに、過剰な兵器?! マル、お前もネジ飛んでるんだな!!」
って、誉め言葉にも聞こえない賞賛が、ハナ姉から贈られた。
贈られたって事は、だ。
「――装填は自動で、空の薬莢は燃え尽くされるよう新素材を検討した。これでも、エサちゃんが使うって事で安全には万全を図ってるつもり...なんだけどね」
舌打ちが聞こえた気がする。
誰のかは分からないけど。
ハナ姉の雰囲気が怖い。
「ネジ、飛んでねえのかよ」
「あ、いや...ハナ姉のもあるよ?」
彼女の目が輝く。
豆鉄砲だと言われないよう、相当配慮して。
ミニガンなるものを制作。
多銃砲身が回転して、弾丸を吐き出すちゅう代物で。
ハナ姉のミリタリー本から参考にした一品。
広い車内でプレゼントしてみた。
「おお、いいねえ! 撃っていいか?」
え? ここで。
笑顔がマジ、怖え...
◇
装甲車が、ハイフォン王国の都市内を走る。
うん、これは快適な乗り心地だ。
「で、よう? なんで俺様が運転手に?」
アロガンスに運転を任せた。
大型特殊免許持ってるとか、言ってたし。
装甲車に一目ぼれしたとも言ってた。
「キルダ女史と、完全武装の海兵隊6名の同行は...まあ、いい」
あ、キルダさんが涙目に。
そんなに追い詰めないで~
キルダさんは、軍艦の中では仕事が無い。
軍艦の操作にはウサギ艦長が長い耳の手入れをしながら、挑み。
モモ提督も同級の艦長を弄る日々に勤しむ...いや、それは邪魔というのか。
で、ウナちゃんはそんなエイ型の最高責任者という立場、
「どうせわえは、お荷物ですよ~」
キルダさんとこの訛りが...
およよよよよ...泣き崩れてる。
「ほらー泣かしたあ」
ボクがハナ姉に何気なく突っ込むと、
わき腹に指が突き立てられた。
こ、これはクリーンヒット?! HPがマイナス100ポイント吹き飛んでしまっている。
意外に大きなダメージだった。
「ハイフォンで現地調査だと聞けば、ウナも降りてくると思ったのだが?」
ああ、そこか。
はい、キルダさん出番だよ!!
「第二魔王陛下には、裁可を仰がなならん案件が山積み故、此度のご遊行は難しいとの結論に達したのであるんや...」
鼻息荒く涼しげなどや顔で、だ。
キルダさんは状況を示してくれたけど...
でらあ、訛ってる。
「あ、そう...」
ハナ姉からも毒気が抜けた。
エサちゃんは、回転砲座にあるペリスコープ越しに世界を見渡し遊んでた。
自動装填装置は作動していないから...た、たぶん、大丈夫。
◆
蘇王国に亡命した、北天政府。
国としては形ばかりの状態になってしまったけど、最前線は“斉”公国の南部地域“広州”だった。
広州に集められた決死隊は最盛期の6割を喪失して約15万人。
東洋王国の鬼人族とは縁戚にあたるらしいんだけど。
容赦なく蹂躙されてきた。
東洋側の快進撃には、ナーロッパでも新兵器であるとされる“戦車”であるという。
攻城砲による水平射撃をものともせず、驚異的な防御力と火砲で戦場のあちこちで疾駆している存在。
いたずらに兵力のみをすり潰しているような錯覚さえ覚えてた――北天側将帥らの本音だ。




