- C 488話 陽炎の帝国 7 -
ボクたちの軍艦が、南洋王国・クイーンズランドへ到達した頃。
眼下の惨状は地獄絵図に見えた。
これ、幸いなのか。
モル女王が魔界に攫われた結果で生じた衝撃的事実。
シーズンが刷新される世界では、女王の居ない王国として南洋王国があった。
というか、最初から一枚岩の王国なのだ。
この国の歴史が改ざんされた。
うーん...
ヤバくね、それ。
血統保存の為に、東洋王国へ打診するも...
「余の血脈を何だと思って居る!!」
なんていう怒りを買ったようで、断交。
海のエルフなんて言われてた、人魚族の系譜は途絶えたんだとか。
直系でなくていいのなら、まだ幾分かは残ってるけど。
母×母×父×母×父×父×母...
なんてのは、母系主義の南洋王国が認めない。
東洋の方は、しっかりと守られてきているし。
タネ元の父系の方も、東洋古来の“鬼”族の血が入ってるんだとか。
うーん、これ...
なんていうブリーダーな話です?
◇
南洋王国の歴史が改ざんされた結果、魚人国家としてリスタートしている。
およそ4世紀ほど前の話である。
わりと長い。
一応、前記したように。
母系ではないけども、人魚の女王からの血統は残ってる。
ただし家を興せるほどの力は無くて、現状は単なる貴族の一つみたいになってた。
市民レベルでの熱量は普通。
貴族よりももっと冷めた感じで、自分たちの生活がもっとも大事な感心事になってた。
ま、そりゃそうだ。
「眼下、ヤバイことになってるな」
艦長席のひじ掛けに腕を乗せ、うずくまるウサギ艦長。
超高高空まで達したから、もう地上の連中に見られることはないけど。
こっちから地上を見渡すことが出来る。
「敗北宣言を聞いた時は耳を疑ったが、王国本土まで攻撃が及ぶとは、な」
ブリッジには軍服を着崩したモモ提督がある。
ボクをハナ姉に届けた後、急いでブリッジに戻ったら...ウサギちゃんが項垂れてたんだとか。
気を張り詰め過ぎてた彼女は、突如、電池切れになったらしい。
「ま、それは良いとして...ウサギ、お前」
「座り過ぎだ...尻が痛くて、立てぬ」
「丸いしっぽが」
モモ提督にかがれて――ボクと同じような、枕みたいにだ。
「おいおい」
これは恥ずかしい。
でもって、ズボンから出ている丸いしっぽのふさふさ加減のチェック。
安堵したかのように息を吐き。
「心配させるな! お前のしっぽが潰れたんじゃないかと、肝を冷やしたよ」
「あたしは、すっごい恥ずかしいよ!! いい加減、この姿の改善を求む!!!」
モモ提督は、そう。
ハナ姉とタイプ的に同じ。
長身で、胸と尻のデカイ、大人の女って感じ。
ウサギ艦長は...
ボクたちと同じかな。
童顔で、目が大きく、出ているとこが少ないマスコット的存在。
「艦長、かわいい」
ブリッジのスタッフたちの漏れた声。
「かわいか、ないわ!!!」
反論するウサギ艦長はもっと可愛らしくなる。
頬を真っ赤に染めてるし。
「なあ」
「あ、うん?」
ウサギ艦長はやや諦めたような息を吐く。
ばたつかせる足も大人しく垂れたとこ。
「正直、どうする?」
介入するかって話。
艦長は首を横に振った――彼女の目にはブリッジのスタッフが見えてるし。
「危険を冒す必要はない、が...聖櫃の情報は必要だ。だから...」
「それでいいのか?」
「ウナさま方の判断は、仰ぐつもりだ」




