- C 467話 いざ、外洋へ 1 -
気を張ってたんだろう。
ボクが落ちたと聞かされた時、彼女はひどく狼狽したという。
いや、他人の目には落ち着き払ったように...義妹は生きているから捜索をって、指示してたという。だけど、本当に心配してて掌には、握りしめたときに出来たであろう爪の食い込み痕が、まだ残ってる。
ごめん、ごめん...
言ってあげたい。
だけども...
ハナ姉は、今、手が離せない。
いや、顔をボクの股に沈ませたまま、戻ってこない。
「あ゛~」
吸ってるよ、吸ってる。
もぞもぞ動いて、気持ち悪いよ~
◇
迷子という話を――
連絡用のペンギンの格納庫内で聞いた。
「迷子かあ、って誰が?」
ボクは艦内通話用の受話器に向かって声を挙げた。
ま、ハナ姉の方はボクの太ももの上で睡眠中である――先ほどにも言ったけど、彼女は気を張ってたのだ。ボクのことを本当に心配してた証左だ。で、爆睡中の彼女は、ボクが声を張り上げたところで動じなかった。
いや、目が覚めてたとしても...
ボクの太ももから、退きたくは無かったかもしれない。
「こちら電算室です」
飛行ゴーレムの術式によって出来た航跡を捜索、監視しているチームがある。
四領から南方に飛び去り、三領の上空を半日かけて南極海へと到達。
そのまま、南極のポータルを目指したことまでは追えていた。
が、
ポータルを通過した“カイザー・ヴィルト”の痕跡は其の時点で、途絶えたことになる。
「じゃ、そのポータルに行くことが目的になるじゃんよ?」
言われてみればその通りである。
ポータルにはログが残る。
まあ、ログを残さない抜け道はあるけども...
その方法は現実的ではない。
ポータルでは常に利用者ごとにポータル利用時間が記録される。
24時間を分刻みで稼働中のポータルでは、タイムスケジュールとで差異が無いかを二重チェックしている。そのため、仮に使用ログだけを改竄した場合、この二重チェックにて違反が24時間後に発覚する恐れがある。
改竄するとなると、ポータルそのものにも、接続してしまわなければならない。
だから現実的ではないという意味。
それでも...
それでも、すでに数か月もの時間が流れている。
「確かに厄介だとは思うけど」
「電算室の不手際という事で」
「いやいや、あっちこっちに首を突っ込んだのはボクたちの方だ。それらを棚に上げて...誰が悪かったなんて罪の言い逃れなんてできやしないよ。まあ、ポータルに行ければ...行き先が分かるとは思うけども、どのみち、南極と北極のポータルは、表の“地球”につながってた筈だ」
魔界はフレームで言えば、地球の裏側みたいなもの。
パーテーションで区切られた世界ではないんだけど――
感覚的な答えかなあ。
で、だ。
表の世界のどこへ出るかなんだ。
ただし、アクセス権限とともにマスタキーが必要になる。
「聖櫃ってのがただのNPCってんならその危惧はないんだけど」
ボクがロード種に弟子だと与えた亜人種たちは、みな、NPCだった。
かつてのAIたちよりかは、はるかに高い感情を持ったニュータイプなNPCだったと思うけど...




