- C 355話 侵略者たち 30 -
3000人もあった兵力も、2000までに減る。
ひとりひとりには名があったけど、今となってはただの数でしかない。
入植作戦はひとりでも、村に潜伏できれば――彼らの勝利だ。
これらの戦闘がすべて終結に至れば、かならず侵略者が蹂躙した地域が調べられる。
そこで少しでも違和感のある行動――つまりは、全滅した村に人の痕跡とか、あるいは難民を装ったとかであろう。そういう如何にも潜んでますよってのは極力、避けなければならない。目立ってはいけない、不審がられてはいけない...息を殺して、慎ましく。
◇
「閣下、三領国境付近から照明弾です!!!」
色は?という問いに、
すぐさま、赤色と答える樹上の者。
何人かが樹上にあがって、周囲を警戒している。
「東の方は...以前」
「閣下!」
小声だがはっきりとした声で、彼を呼ぶ。
“モーダ”城塞より北へ10kmほど戻り、山中に身を潜めた彼らは態勢の立て直しをしている。この半分にも拠点を構えたのだけども、魔法飛行士たちに見つかり、銃撃戦となって退去せざる得なかった。
少し北上すると、未来では廃れてしまった村に出る。
この時代では人口千人は、いるであろうから...迂闊に姿を晒すわけにはいかなくなる。
村の真ん中にある教会の鐘が、呼び水となって四領軍を迎えてしまうからだ。
「どうした?」
「ドクターからです」
将軍が特設の天幕へ招かれると、
泡を吹いた兵士たちが、担架であつらえた病床の上で息絶えてた。
手前の者から名を呼びながら、
揺さぶり、頬を叩き、胸を圧し叩いてた。
「これは?!」
「この世界のいや、この時代のポーションが、我々の身体には毒となって表れてる証左じゃ! それでは説明が不十分じゃな、この世界に来るため...急ごしらえでもあった、ナノマシンじゃが、アンプルに対しての抵抗力でも十分ではないが役に立って居る事は...お主も分かっているであろう?」
将軍は頷く。
その顔色は優れない。
「これまでは我々が持ち込んだ、儂らの世界の薬だったから...何事も無かった。いざ、治癒アイテムが枯渇したので、念のためにと各村々から収奪した薬を使ってみたら...こうなったのだ」
医師が投げるのもどうかと思うけど。
容体が急激に悪化して、患者たちはまるで集団自決でもしたかのようなありさまへと変貌をとげた。
「使う前に試薬すれば...と、今では思う」
狼狽する医療チーム。
その筈で、自分たちの分すらもうない。
手足を失った患者たちに使った後だ。
でも、出し渋る衛生兵も、それはそれで見たくはない。
「治癒魔法は?」
「うむ...元の時代より3割、いや4割増しの回復量だから、当然、肉体への負荷が大きく術者も、その患者にも控えてたところじゃ。この時代の回復薬は、よく言えば原始的なのだろう。水剤の中に含まれたマナが多くて、下手な話だが儂らは、腹を下したのだと思われる」
ポンポンが痛くなっても死にませんが。
まあ、旅行先の水は、飲まないようにしましょう...ってのは聞く。
故に店売りのペットボトル水は、重宝がられる。
「非戦闘員は、このまま去れ!!」
静かに告げる。
別れの言葉だ。
「何をする?」
「決まってるさ、最後の戦い」
残っている兵は医療チームを除けば、1600人くらいに成る。
残存兵力として、けが人も加えてたから...彼らの数も数えなくて良くなった。
「夜のうちに南下する。朝日と共に仕掛けて散る!!」
戦士たちの拳が突き上げられる。
その夜、非戦闘員である医療チームは、ごく一般の旅人となって、各地へと散っていった。




