- C 353話 侵略者たち 28 -
魔界時間で丁度、1世紀分。
身に覚えのないボクらの忘れ物は、魔界でも劇的な物流革命を引き起こした。
帆船から蒸気船となって、鋼鉄の船が浮かぶまでに進化するように。
各国に遺された、怪鳥ゴーレムは研究対象となっていく――魔紋学だとか、ゴーレム学なんてのも次々に生まれていき、あれから1世紀も経って...尚も人々を惹きつけ熱の冷めない、ハイセンスな学問として継承されてきた。
...っ、らしい。
マジか。
ボクの忘れ物、凄まじすぎる。
「作り過ぎなんだよ」
ボクの後頭部を叩くアロガンス。
“タマネギ”ちゃんズの話のようだ。
今でも、郊外では農作業で大活躍している現役の子があるらしい。
恐るべき耐久力と、学習能力である。
「感心するのはいいけど、悪さに使用されなかっただけ...有難く思ってよね」
紛争が起きないのは、天領軍の睨みが効いてるからだろう。
「そんなわけあるか!!」
再びアロガンスから叩かれた。
ぽんぽんボクの頭を叩かないで欲しいな。
この中には、叡智が眠っているのだから...
「...随分と前からだが、火種がくすぶってる。四領王なんかはいい例だし、五領だって実のとこ、特別な事じゃあない。ゲートの無断使用を認めないってだけで、実際は、本当の監視なんてできているか分からんし、監視者が買収されている可能性は否定できない。...それでも統一王朝を支える、一領王、二領王、三領王と...12領王があって残りの領王を見張っているから。多少の何かしら適な抑止力として機能はしてた。が、もう、破綻しかけている」
再び、ボクは飛ぶように挙手してた。
凹凸のないボクですが、飛ぶときは高く飛べるんですよ!!
「何?」
ムヒさんの目に止まる。
実際には鬱陶しいと思ったのだという、が。
「1~3領王は御親戚だってのは分かったけど...何で、12領王が絡むの?」
ボクの目が点になる。
ムヒ、ウナ、クロアに、エサちゃんも点になって...
キルダ・オリジナルが、
「天領は12領にあるからだよ」
だって。
え?!!!
◇
12領王は、中央の巨大大陸にはない。
大海を挟んだ、別の大陸に存在し、各領王の直接的交流もない。
ただ、領国の出張所みたいな狭い土地が山岳地域にあった。
その猫の額のようなトコを...
「12領だと偽ってたたあああ?!」
ボクが転がった。
とこどころ真っ平で凹凸も無いから、転がったとてただまっすぐ、壁の方へと。
むなしい。
エサちゃんも面白半分で同じことを...
彼女は、お尻の方がすこし大きく、緩やかにカーブを描くように元居たところへ戻っていく。
何だろう、この怒りは?
この悔しさは?
そして、悲しさは?
「ドンマイ、マル」
ウナちゃんがボクの傍にいる。
ああ、君も同じことをしたのか...
「仲がいいのは強調しなくていい。結論から言うと、ゴーレムマイスターの称号を持つ技術者から何かないのかね?」
苛立つのはムヒさん。
妹さんと遊ぶボクの姿は、平穏な場ならば然して問題はないけど。
こと聖櫃が絡むのだとすると。
心穏やかにはいられないという。
分かる...なんとなくだけど。
「この魔界のような場で設計したのであれば、ボクの術式はこう“書き換え”られる...精霊結晶による半永久機関で超高高空かつ、いつまでも飛ぶことができる夢の乗り物になると!!!」
大気中に充満するマナを浮遊魔術の糧とし、機内の動力源にはマナ溜りによって出来た、天然結晶を触媒とする魔術回路の応用でこと足りる。
また、天然結晶のマナ補給も、大気中から充填できれば半ではなく、永久機関となる。
農作業で今も現役だとすると、学習機能のあったゴーレムたちは、自らそのアンサーに行き着いた可能性すらある。
「ちょ、ちょっと待って!」
「はいはい、どうぞ」
ボクは、スク水を脱ごうとしてた。
ウナちゃんが返してほしいのかと...
「ちゃうわ! てか、それは私のじゃなくて、皇帝陛下のJC時代のだ!!!!」
「うわ、それはなんと貴重な」
嗅ぐ素振り。
「洗濯済みですが、嗅がないでください」
ああ、そっか。




