- C 352話 侵略者たち 27 -
「聖櫃の目的は、単に混乱という単純な事じゃなく、探究が常にあると思われる。が、今回の騒動はこれまでとは少し毛色が違うというか。こう、ちょっと別の目的があったような...」
言葉では、上手く伝わりそうにない。
知識の押し売りは、これまでにも何度かあった。
その見返りが、(彼らにとっての)混乱だった訳だけども。
いや、ぱっと見では今回も。
「確かにそういう事ならば...ね」
ムヒさんが、関係ないかも知れないけど――なんて前置きで、皇帝に告げる情報を開示してくれた。本来は首脳陣だけが閲覧するであろう、聖櫃の情報で...ボクたちのような怪しい連中に、開示されるはずも無いものだった。
それは、第5艦隊が追ってた、ノイズの行方だ。
「南極海方面で“カイザー・ヴィルト”の機影を見たと、報告がありましたの」
ノイズの正体がその飛行要塞かは確認が取れてない。
ノイズが遠のいて消えた方角と、目撃された時刻等が偶然というには、少し出来過ぎているような“違和感”があった。ノイズの解析は、目下、同艦隊で急ピッチに行われている案件だけど、恐らくは怪鳥ゴーレム“カイザー・ヴィルト”である可能性は......。
高いんだそうな。
ただし。
ここでもう一つ、削っておかないといけないことがある。
南極海に面している国が2、3という数ではなく。
12の太守国のうち、半数が該当するということ。
「じゃ、仮に目撃された怪鳥ゴーレムが...実は、聖櫃とは何ら関係ない可能性も? あるってこと...」
エサ子は、鼻頭を摘まみ。
手鼻を噛む。
あ、や、ばっちぃなあ!!!
「あくまでも可能性だ」
平静なムヒさん。
ボクたちの中で一番の年長さんという感じか。
ちびっこ剣士キルダ・オリジナル...は、どっかそっちに置いておこう。
「仮にとする部分は、とにかく多いぞ。何しろ、何もわかっていないというのが根底にあって、そこから空想とか妄想とかで推論している。正に砂上の楼閣、破綻するのが当たり前になる訳だけども、聖櫃の飛行要塞が我々とは違う技術で飛行しているのだとすると...」
ゴクリ、皆の喉が鳴る。
いやあ、ボクも一緒に唾を飲み込んでたひとりだ。
なんで?
そりゃあ、集団心理。
「べらぼうな航続距離を持っている!!」
◇
「しつも~ん!!」
スク水に着替え終えたボクは、その場で挙手してる。
あ、脇の下は別の手でちゃんと隠してるぞ!
これ、マナーなんでしょ!!
「旧いアクションだが、どうぞ...マル・コメ嬢」
「えっと、航続距離ってなんぞ?」
ボクの怪鳥ゴーレムには、そもそも航続距離の概念がない。
いや、魔界じゃない世界で飛ばすには、効率の良い方法が見つからなかった。オリハルコン粘土や、精霊石あたりを利用して、飛行する動力としたけど...構想そのものは、空気中に充満しているマナを、十分に取り込むことが出来れば永続的に飛行することが出来る。
ハズ...なんだけど?
ん?
ボクとウナちゃんの視線が交差する。
「そもそも今の怪鳥・飛竜ゴーレムって、誰のをモデルにしてるの?」
先ずそこから説明が欲しい。
大雑把な設計なんかして~
「マルちゃんの忘れ物が原因だよ」
「は?」
歯の間にものが嵌ったような不機嫌さと、
加えて一方的に嫌悪を交えて、睨み返しちゃった。
ボクは、この時点で何も覚えていない。
そう、ボクらは...
魔界に幾度か足を踏み入れているという事をだ。




