- C 351話 侵略者たち 26 -
「返事を渋られていると?!」
枢機卿が膝を抱えて、ソファーで小さくなってる。
気が弱すぎて倒れそうである。
四領は虚勢だけで、やや平和だから正教会も、彼を派遣した。
まさか、渦中になろうとはおもってもみない。
正教会としても――『一日でも早く帰国せよ! そちらでの仕事は、すべて後任の者に任せて安心するのだ』と、気遣ってるのだけど。気弱な枢機卿にしてみれば、これも悪い方に受け取ってしまった。
すでに後任の司教区長・枢機卿が選出され準備万端。
気弱な枢機卿では、任務の遂行は困難であるから降格しよう、とか。
そうやってマイナスに思考を落とし込むと、手の震えが止まらなく...なるようだ。
典型的なうつの症状が出ている。
「はい、しかも勘繰られてて...この際は、国内の内情を明らかにし、」
会話を遮られた。
執政官は、
「明かすのは容易い。だが、プチとはいえ、これは叛逆行為である。王を裏切ったのだ...事態が好転し、天領の支えも無くなった時...我々が、これまでの事を反故にする行動に出ないとも保証は出来ない...と、彼らは考えるだろう。今の渋り具合からしても、十中八九、裏目に出ると予測して最悪の回避に努めねばならない!!」
後ろめたい事があるから、そういう行動にでる。
いや、考えた。
考えちゃって、余計に気を巡らせる。
そんな事を考えなくてもいいのに。
◆
皇帝の居室。
手紙卓のあるプライベート空間で、だ。
彼女の赤面が見れる、芸能雑誌を皆で見る――漁ると、出るわ出る...世俗まみれじゃないですか!!ってな感じで、泣いちゃったので...
「聖櫃のことに話を戻そうか?」
「五領が戦場になった理由はズバリ! 野外訓練場が欲しかったから」
これは飛躍し過ぎたか。
否、これこそが第一のテーマだ。
ポータルの無い五領王に、その知識を与える。
使い方がどうとかは、彼らの与り知らぬことだけど。
爆弾の作り方を教えれば、意図に関係なく共犯だ。
しかも、誘導しているのだから猶更だ。
『先王の姿がこの転移門で目撃された』とか、仄めかしたのだろう。
キャベ・ジンは叔父を求めて門を開く。
その行動が、天領の逆鱗に触れるものだと知らずに、だ。
「五領が虎の尾を踏むよう、仕向けられた?! ...と?」
「聖櫃の動向に気を配ってた、あなたがただ。...五領に入った者も感知してただろう?」
ボクの指先は、キルダ似の小さな剣士に向いている。
意図的にではなく、指さして無事そうな相手を選んでた――皇帝クロアは論外、ムヒさんとウナちゃんからバッサリ切られそう。ウナちゃんに向けるのも...変。
魔界との連絡は、毎回とっていたのだろうけども、こっちはボクを監視してたはずだ。
ムヒさんも、ボクの方が知らないし。
指さしたら齧られそう。
で、それとなく...
身長に見合わない長い太刀の切っ先が、ボクの指先に刺さる――お、こりゃ、マジ痛いっ!!
「いったあ~い!!!」
指先から、大袈裟に血が出やがったです。
いや、刺されれば血もでるさ。
「テキトーにこっちを指さすな、まな板! 大根でもすり下ろされたいか、おろし金の分際で」
あ、辛辣。
雑種が、まで言われた。
この剣士、苦手。
「マルちゃんに喧嘩売るなら、わたしが買うよ!!!」
って、エサちゃんが飛び込んできて...
剣士に、蹴り飛ばされた。
「きゃんきゃん喚くな!!」
皇帝クロアも慄く、チビ剣士。
指先を舐めてるボクは、
「...っ、話をすすめて、」
「構わぬぞ! な、弟子よ?」
クロアが頷き、
剣士は、袖に戻る。
この子、何者...
◇
「話を戻そう! ボクらはまんまと、聖櫃らの掌の上でダンスを踊らされた。各人とも、躍らせ具合には差異がある。ま、ボクを診て貰えばいい、爪は剥がされ、服を失い、そしてこのちびっ子剣士に指まで刺された!!!!」
根には持つ。
剣士の瞳がボクを穿つ。
ああ、まな板を...ですね、お嬢さん?
「知るか、キサマの身の上など小さい事ではないか。迷惑をこうむったのは、天領軍である!!」
剣士は腕を組んで、ふんぞり返る。
それをさせてしまってる点で、皇帝との力関係が分かる。
「もしや...」
「剣術指南役の」
クロアが紹介するシーンに割り込み、
「俺様が、キルダ・ファイル・オリジナルじゃ!!」
さらにふんぞり返る。
キルダ・ファイル当人だけに及ぶ、個人特異点が発生してた。
と、いうか...隣の世界へ転がり込む性質の時間牢獄。
「じゃ、えっと、」
クロアは肯定しなかったけど...
オリジナルなのだから、天才剣士は伊達じゃないと。




